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書籍『「主権者」は誰か ― 原発事故から考える』

H・T


 末期ガンの宣告を受けながら、原発事故に関する東電や東電・政府合同の記者会見にフリージャーナリストとして100回以上も通い追及し続けた日隅一雄さんの新刊です。日隅さんは、新聞記者出身の弁護士として以前からメディアや言論の自由のあり方などについて活発な発言をして来られました。本書の「はじめに」で、原発事故を取材した目を通して、「主権者とは誰か」という問いを立てなければならなくなった、なぜ国民は主権者として振る舞うことができなかったのかという執筆の動機を記載しています。ブログでは、(本書を)「手にすることができないのではないかと危惧していただけに、嬉しい。」と。

 代表制民主主義のもとで私たちが主権者として振る舞うことができるための5つの条件が、「あたらしい憲法のはなし」から引用されています。要約すれば、@国民が情報を得ること、A情報に基づく投票、B国会における国民の意思の反映、C行政の監視、D主権者として振る舞うための教育です。

 著者はまず、@について、政府や東電が国民に対していかに情報を隠してきたか、多くのマスメディアも政府の表向きの発表ばかりに依拠し国民の知る権利に答えることに失敗したかを述べています。
 本書の大きな特徴であり長所は、それぞれの問題点の解決の方法を具体的に示していることです。記者会見の開放、「私企業」だからという東電のあり方の見直し、内部告発者をどう守るか、などです。

 では、この国では主権者は誰なのか。それは官僚ではないか(「主権在官」)というのが著者の問題意識です。上記のCに関わります。
 ここでも解決方法として、規制と推進の分離、天下り防止、オンブズマン制度の導入、国会による監視が語られています。

 原発の問題でも司法は役割を果たせなかったことが論じられています。解決策として、判検交流の見直し、裁判官の市民的自由の保障による市民的な感覚の涵養等々が提示されています。

 最後に、「主権者として振る舞うために」というタイトルで、上記で触れられなかったABDについての解決策が検討されています。Aの国会との関係では、日本の選挙運動の自由に対する異常な制約や小選挙区制の問題点です。Bについては法案審議における党議拘束をなくして議論を活発にすることが提案されています。
 Dとして国民が主権者となるための課題として、国民に対する「主権者教育」などの政治的リテラシー及びメディアリテラシーが不可欠であることが強調されています。

 国民が字面だけの主権者に止まっているのは原発問題に限らないことは全体を通して充分に伝わってきます。外国の事例も豊富に紹介され、日本でも私たちの姿勢次第で主権者になれることは可能なことがよく分かります。薄い本の中に込められたエッセンスは濃密です。

【書籍情報】
2012年4月12日、岩波書店から岩波ブックレットとして刊行。定価:本体500円+税。



 

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