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憲法情報Now<憲法関連書籍・論文>

 

<紹介文>石埼学・遠藤比呂道編『沈黙する人権』法律文化社、2012年5月刊

石埼学(龍谷大学法科大学院教授)


 本書は、私と遠藤比呂道氏(弁護士)の共編著である。法学館憲法研究所のご厚意で、ここに、編者自ら紹介させていただく。
 現在の日本では、多かれ少なかれ、誰しも人権を行使している。しかし人権を行使しているのはどのような人であろうか。また、どのような場面においてあろうか。ある人が本当は人権を主張すべき苦境に立たされたときに、肝心な時に、人権の主張はできなくなってしまうのではないか。そうだとすると、その原因は何であろうか。
 法学部や法科大学院に入学した学生は、主として人権の解釈論を学ぶ。市民は、行政や市民団体などの行う人権啓発活動等を通じて人権の理念を学ぶ。しかし、どちらで人権を学ぶにしても、「人権論を雄弁に語る」ことに「何らかのいかがわしさ」(本書257頁)が付きまとうと感じている人は少なくないのではなかろうか?言い換えると、憲法学の人権論にしても、人権教育の人権論にしても何かが抜け落ちているのではないか、あるいは人権の教育も学習はどこか上滑りしていないか。本書は、憲法学者、刑法学者および社会学者がそんな問いに真摯に向き合った成果である。「いちおう総論」の二つの章が冒頭にあるが「学問的体系性」はない(本書8頁)。それにもかかわらず本書の論考には共通点がある。それは、「人間は、人間の価値、尊厳をいくら言葉にもたらそうとしても、自分に相応しい表現をみつけることができないのと同じように、それが傷つけられた状態を表現することができないのです。まさに人間存在の美しさと残虐さは。『言葉にできない』のです。にもかかわらず、人間は絶望のなかから、苦しみのなかから、自らの存在の意義、価値、尊厳について『声』をあげ、他者の理解を求め、自分の居場所を求め、そのことで自分の『居場所』を発見しようとする営為をあきらめることもできない存在なのです」(本書274頁)という認識である。この叙述が示す人間の「美しさと残虐さ」に正面から向き合った諸論文からなる本書には、読者のイメージする人権なるものの再考を促そうとする企図がある。その企図に基づく本書の出来具合は読者の批判を仰ぐほかはない。



 

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