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論文「空襲訴訟 司法の果たすべき役割とは」

H・T


 今年4月25日に、東京大空襲訴訟の控訴審判決(関連情報)が東京高裁で、昨年12月には大阪空襲訴訟の第1審判決が大阪地裁でそれぞれ下されました。
 空襲訴訟は、戦争に関する国の責任の取り方に関わる極めて重大な訴訟ですが、被害は受忍すべきであるという国の主張は果たして憲法に違反していないのかという議論が必ずしも活発になされているとはいえない状況の中にあって、筆者は鋭い問題を提起しています。
 これらの訴訟は、空襲被害者の救済立法が存在していないことについて、違憲であり国家賠償法上も違法であると、立法府の責任を問うた国賠訴訟です。原告らは、軍人・軍属や、原爆被害者、沖縄戦被害者に対しては援護措置が講じられているにもかかわらず、空襲被害者には講じられていないのは、憲法14条の平等権を侵害すると主張しました。判決はいずれも、空襲被害者に救済措置を講じるかは立法裁量に属する事柄であり、軍人らとの別異の扱いは合理的根拠がある、ないし、明らかに不合理とはいえないとして請求を却下しました。

 筆者は、14条違反の問題では、既に救済されている集団とそうでない空襲被災者との間で別異の取り扱いをする合理性が問われるべきであるところ、判決はこれを怠っていると述べています。空襲被害者は、防空法により、避難することなく防空業務に従事することを強制されていたとの指摘は重要であり、別異取扱いの合理性について違憲判断に踏み込むべきであると主張しています。軍人・軍属など圧力団体の強いところに50兆円も支給され、空襲被害者には全く支給されないのは、民主主義が本来の機能を果たしていない場合であり、司法府が違憲審査権の行使という責務を果たすべき場面であると。他に、憲法13条も論じています。
 空襲という武力の行使に対して武力で立ち向かうことを強制された被災者の救済を放置することが憲法9条の下でも許されるのか、考えさせられる論考です。

【論文情報】「世界」2012年8月号所収 筆者は青井未帆氏(学習院大学教授・憲法学)岩波書店 840円(税込み)

<法学館憲法研究所事務局から>
 9月15日(土)、「平和と憲法 − "武力なき平和"のリアリティ」と題して水島朝穂氏(早稲田大教授)が講演し、当研究所の浦部法穂顧問(=神戸大学名誉教授)と対談します。こちら。尖閣諸島などをめぐる緊張関係の中で、日本国憲法第9条を活かす道が語られることになります。多くの方々にご参加いただきたいと思います。
  * 水島朝穂教授の「平和憲法のメッセージ」



 

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