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論文「50年目の『平和主義』論」

H・O


 1997年、日本国憲法施行50年にあたって、浦部法穂・神戸大教授(当時。現在は法学館憲法研究所顧問)が綴った論文です。いまから15年前の論文ではありますが、その内容はこんにちに生きる人々にも鋭く問うものとなっています。
 日本国憲法は平和主義を最大の特長にしているといえますが、ここでは憲法学が「そもそも平和主義」か、「さしあたり平和主義か」を問う必要性を提起しています。
 浦部教授は、「さしあたり」論は「対米従属・保守支配という政治状況のなかで『さしあたり』非武装平和主義の有効性を認めるもので・・・軍事力じたいをそもそも否定するわけではない」とし、「さしあたり」論は、人民の権力が樹立したあかつきには、その「良い権力」の軍事力は、人民に敵対する内外の勢力に対抗するものとして肯定することになると指摘します。そして、「さしあたり」論は、「より多くの人民を救うためには、多少の犠牲はやむをえない、と考え」、それは憲法の「個人の尊重」とは相容れないのではないかと問題提起します。
 一方で、浦部教授は、「そもそも」論にもとづく各種の主張にも問題を投げかけます。
 一つは、日本国憲法自体が、天皇制条項を設け、過去の戦争責任へのあいまいさを残していること、あらゆる戦争を否定する立場をとりつつ、アメリカの原爆投下などへの追及が弱いこと、などを指摘します。
 もう一つは、日本の軍事力負担を抑え経済成長を遂げたことに憲法9条の功績があったという主張は、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生きる」という日本国憲法の精神を実現させる観点から吟味されるべきことを指摘します。
 浦部教授は、自身も以前は「さしあたり」論に傾斜してきたと告白しながら、その問題性を説いています。憲法の平和主義を支持する人々は、2004年以降「九条の会」に広く結集してきました。その果たしつつある成果を確信しつつも、あらためて憲法の平和主義について自分なりに深く考えさせてくれる論文です。

【論文情報】
筆者は浦部法穂氏(執筆当時は神戸大学教授。現在は法学館憲法研究所顧問・神戸大学名誉教授)。樋口陽一・森英樹・高見勝利・辻村みよ子編『憲法理論の50年』(1995年、日本評論社)所収。



 

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