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書籍『社会を変えるには』

H・T


 近代日本の歴史を専門とする著者の小熊英二氏は、近代社会が生み出し憲法体制となった代議制民主主義の危機を採り上げています。無党派層が多数派になったことにも現れているように、代議制民主主義において本当に「われわれ」の意見が「代表」されているのか、システムを担う政治家や政党に対する不信がかつてなく高まっていると。長らく続いた重厚長大の工業化社会の特権層は、ポスト工業化社会における諸問題の解決策を示すことに失敗した一方において、「われわれ」を犠牲にして既得権益を守っているだけではないかということです。

 本書は、2011年からのデモを中心とする直接民主主義的な原発反対運動が「社会運動」といえるまでに成長しすでに1年以上継続していることに注目しています。これを可能にしたのは、社会構造の変化に深く関わっているゆえに、市民運動が原発以外の問題にも継続的に広がる可能性を見出しています(もっとも、脱原発デモなどは縮小していく可能性があることも報道されています)。

 著者は、市民の社会運動が定着するためには、以下のように歴史や思想から学ぶことが重要であることを強調しています。代議制民主主義はナチスの独裁政治を生み出したように、危ういものだからです。

 ホッブスやロックなど、後代まで引き継がれている思想は、それを生んだ混乱と不正の社会構造の理解なしには語れないと述べています。彼らは、その渦中にあっていかにして人々の幸福や平等を実現できるかを考え、苦闘しました。今、(新)自由主義の元祖としてアダム・スミスや功利主義のベンサムなどが引用されています。しかし、スミスは、人間は他者の幸福を喜び他人の不幸を悲しむ同感も神から「見えざる手」として与えられている故に政府は余計な介入をしない方が良いと主張しました。ベンサムは「現代人より急進的な平等主義者でした」。

 著者は、近代の基本的な考え方は「主体があって客体を認識」し、「私」が考える真実や正義を「あなた」に説得するものだったとします。しかし、争いや戦争は止みませんでした。そこで、その後に登場した関係論(最初から「私」や「あなた」があるのではなくて、まず関係があり、「私」や「あなた」は事後的に構成される)、不確定性原理、弁証法など、視点を複数化し見方を相対化することを提唱しています。尖閣諸島の問題などの解決のヒントも述べています。

【書籍情報】
2012年8月刊行。講談社現代新書。小熊英二著。本体1300円+税。

<法学館憲法研究所事務局から>
 法学館憲法研究所は11月4日(日)に「政治と憲法—選挙制度・政党のあり方」を開催します。森英樹教授が講演し、その後浦部法穂・法学館憲法研究所顧問(=神戸大学名誉教授)と対談します。詳細はこちらからご確認ください。



 

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