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論文「『政権交代』とは何だったのか、どう失敗したのか」

H・T


 2009年夏の総選挙において戦後初めて民主党が野党第1党から単独で衆議院の議席の過半数をとり、「政権交代」が実現しました。しかし、総選挙で掲げた理念や政策が実現できず、政権交代は失敗したことに異論はあまりないでしょう。著者もそのことを前提として論じています。

 著者は、民主党政権の公約が早々と失速し失敗した一つの要因として、他の先進民主社会のメディアなら当然行うべき前政権(自民党前政権)の政治・政策の検証を怠り、民主党政権の安易な揚げ足取りに終始したことを挙げています。

 だとすれば、今メディアが各党内及び各党間の動向など、政局の話題を中心に盛んに採り上げている状況において、メディアが行わない民主党政権の政治を検証する本論文は重要な意味を持っています。

 筆者は、この「政権交代」について、民主党がスローガンとして掲げた日本政治の「民主化」という視点で分析しています。
 「民主化」といっても多義的ですが、ここでは「自由化」と「包括性」という2つの座標軸を用いて検討しています。

 前者の「自由化」は、反対や公的異議申し立てとも言い換えられ、政権与党に反対して競合する政治勢力を許容し、ひいては政権の座をめぐる多元的な政党間競争を常態化させることを意味する概念として使用しています。この「自由化」は、「体制」すなわち、政権交代の起きうる多党(「2大政党」制の成立)という側面では、戦後初めての経験であることも考慮し、一定の評価をしています。これに対して、よりリベラルな政策を志向するという「政府」の側面では失敗したという認識を明確にしています(ここで「リベラル」とは、社会民主主義の要素を含む概念として使用しています)。

 後者の「包括性」は、参加ないし大衆化のことで、政治参加の機会が広く市民に与えられていることです。この点、新しい政権党を支える民衆的基盤の交代ないし拡大においては見るべきものがなかった、つまり「民主的刷新なき政権党交代」に過ぎなかったと結論づけています。

 失敗の原因として、上記のメディアや民衆的基盤の欠如の他に、自民党と官僚による「自民=官庁混合体」が強固に存続していること、及びアメリカが既存の関係の変化を頑なに拒んだことなどを指摘しています。

 では、今後の展望はどうなるのでしょうか。上記の「体制」の自由化により多党間競争は逆戻りできない状況になり、かつ、民自両党よりも単調に新自由主義・国家保守主義的傾向を帯びたポピュリズム政党への有権者の期待が存在することも考慮すると、さらなる右傾化が進むことは疑いをいれず、今度はもっと強靭な民衆的基盤をもったリベラルな政党を中核に据えた政権交代の完遂をめざすほかに道はないと論じています。
この観点から、毎週金曜日に行われてきた原発再稼動反対の抗議行動の盛り上がりが、市民社会における民主的刷新を現実のものにするか、注目しています。

【論文情報】
「世界」2012年9月号所収 筆者は中野晃一氏(上智大学国際教養学部教授)

 

<法学館憲法研究所事務局から>
11月4日(日)、「講演と対談『政治と憲法―選挙制度・政党のあり方』」
(森英樹・名古屋大名誉教授が講演)を開催しますので、ご案内します。こちら



 

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