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特集「安倍『改憲』政権を問う」

H・T


 総選挙では景気対策などの影に隠れて政党選択の判断資料としての比重は大変小さかったようですが、日本の国の形を変えようという改憲構想に関する特集です。このうち、自民党が昨年4月に決定し、総選挙で公約に掲げた「日本国憲法改正草案」(以下「草案」という)に関する、憲法研究者による4つの論考を紹介します。すなわち、水島朝穂氏の「『壊憲』にどう対抗するか―改めて問われる立憲主義の意味」、樋口陽一氏の「『決める政治』と決めさせない『市民』―いま憲法を保守することの意味」、奥平康弘氏の「『自主憲法制定=全面改正』論批判」、愛敬浩二氏の「『自民党日本国憲法改正草案』のどこが問題か」です。

 4者は共通して、9条の「改正」に触れつつ、草案は日本国憲法の単なる「改正」でなく、憲法の根幹となる立憲主義の変容という極めて重大な思想に基づいていると述べています。
 正確には現憲法とは異なる原理による「新憲法の制定」です。このような「改正」は、昨年末の総選挙の結果、衆議院では現行の改正手続き要件を定める96条によっても2/3の議員(自民党と日本維新の会の合計)の賛成を得ることが可能になりました。しかし、現在の参議院の議席配分では不可能です。そこでまず、今夏の参院選では参議院でも改憲に賛成な議員を非改選組も含めて2/3以上に増加させ、選挙後の国会において手続き要件故に国民の抵抗が比較的小さい96条の要件緩和(両院のそれぞれの議員の過半数の賛成で改正提案を可能にする)の改憲発議を行い、その改憲を行うことが計画されています。その後、草案を土台とした改憲を行うという手順が用意されています。その意味で、今夏の参院選は極めて重大な意義を持っており、選挙の判断材料として草案の思想や内容を今から知り議論することが緊急の課題となっていることが強調されています。

 マスコミは総選挙後の国会を「保守化」と称しています。樋口氏は、「保守」化というレベルの問題ではなく、草案で明らかになった深刻な歴史観を問題にしています。水島氏も、従来の改憲・護憲という対立軸を超えた「壊憲」(立憲主義の否定)か否かという議論を行う必要性を訴えています。
 樋口氏は、政治の監視者としての「市民」の役割が現在の大きな課題の一つであると述べ、水島氏は、戦争への反省が共有されていた知的中間層が減少し、憲法を頂点とする規範的なものへの軽視、蔑視、嘲笑が民衆レベルで拡がりを見せ始めていると鋭く指摘しています。

 奥平氏は、「押し付けられたから自主憲法を制定し直す」ということは論理上当然に「全文改正」が希求されることになると記しています。

 愛敬氏は、草案の問題点として、上記の他に、(1)保守的・復古的(2)平和主義の根本的改変(4)前文改定の歴史的意味(社会契約の論理の否定、天賦人権説に基づく規定の仕方の全面的見直し)を挙げています。

 私たちが知っている近現代憲法の理論的枠組みが変わろうとしている今、時機を得た特集です。

【特集情報】
「世界」2013年3月号所収 岩波書店 840円(税込み)



 

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