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書籍『危機の憲法学』

H・T



 公務の担当者の間に憲法アレルギーとでもいうべき病理が蔓延している日本では、憲法にもとづく公務執行が嗤い飛ばされる傾向があります。しかし、今日本は東日本大震災という未曽有の危機にあります。危機においてこそ、憲法に基く対応がとられるべきではないか、大震災を契機として、しかしそれにとどまることなく、「危機」における憲法の対応力を検討するために編まれた書籍です(以上「はしがき」より)。執筆者は14名で、外国の法制や判例法理が豊富に紹介されています。

 第1章を担当した樋口陽一氏は、「それにとどまることのない」危機の根源にあるのは、消耗してゆく自然環境資源の争奪と、自己崩壊してゆく「資本主義」あるいは「市場経済」に代わるモデルの不在であると記しています。かつての世界の危機は、「戦争」や「階級闘争」という「主役の激突」という形をとってきました。しかし21世紀の危機は、人々の幻滅と失望の中で漂流するという形をとっていると見ています。「漂流」でいいのか―樋口氏は、危機の本体及び危機の切迫するなかでの苛立ちと不安、それを煽り回収しようとする企てに向けて、「怒り」「憤慨」を向けなければならないと述べています。

 「幻滅と失望」という点では、例えば大震災対策を協議するために設置した15の会議中、10の会議で議事録が作成されていなかった結果、大飯原発の再稼働が結局は野田総理の単独決定行為としての性格を持ったことなど法の整備と運用が、人権保障や民主主義の視点から極めて問題であることが示されています(蟻川恒正氏)。震災後も大政党は利益の「代理人」として「空の器」であり、選挙に民意が反映されにくい状況が指摘されています(只野雅人氏)。

 それでは、「危機」の場合に備えて、自民党の改憲草案に見られるように、予め憲法に国家緊急権に関する規定を書き込んでおくべきでしょうか。立憲主義との関係で難しい問題です。この点、愛敬浩二氏は、普通の法制のままで超法規的に対応した方が、違法なだけにそれを最小限に食い止めるための法的緊張感が働き、人権保障に資すると述べています。

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【書籍情報】2013年3月刊行。奥平康弘・樋口陽一編 轄O文堂発行。本体4100円+税



 

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