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書籍『想像力と複眼的思考 ―沖縄・戦後補償・植民地未清算・靖國』

H・T

 憲法訴訟、市民運動、日弁連での活動などと共に、憲法や歴史を中心とした多数の論考で知られる内田雅敏弁護士の近著です。

 第T章「若き学生たちとの刺激的な対話」。「法律家はどんな思いで具体的な課題に当たっているか」をテーマにした一橋大学での法学館寄附プロジェクト(*伊藤塾を運営している法学館の寄附プロジェクト)を受講した学生たちの感想とそれに対する内田氏の返信が多数収載されています。「敗戦の年に生まれた者の一人として「大日本帝国の実在よりも戦後民主主義の虚妄にかける(丸山眞男)」氏の講義に対して、戦争の残滓も直接には知らない学生たちは、普段は接したことがない刺激的な講義に、ときに戸惑いをみせつつホンネで「感動した」「違和感がある」「先生の意見は分かったが自分の意見は異なる」など率直で多様な感想を寄せています。一人ひとりに対する氏の返信は自立した考えを持つことの大切さに触れつつ丁寧で、臨場感と感動が伝わってきます。世代を超えた真摯な対話の継続こそが歴史を継承し未来を開く希望となることを教えてくれます。総ての世代にとって貴重な対話集です。

 第U章「戦争と靖國と従軍『慰安婦』問題」。安倍首相は、靖國神社に参拝するのは英霊に感謝し哀悼するためだと称し、国民は一定の理解を示しているようです。しかしこの神社の本質は、日本が明治以来起こした総ての戦争は正しかったとする歴史認識にあり、戦死した軍人を「神」として祀ることの意義を豊富な資料を用いて説明しています。それ故に、『慰安婦』も南京虐殺も否定せざるを得ないのだと。

 第V章「妄言を支えるポピュリズム」。2012年は日中国交回復40周年の年であり友好を深める絶好の年でした。南京の虐殺を否定する名古屋市の河村市長の発言と尖閣諸島の購入を図った石原元都知事の「妄言」は、日中間の対立を著しく深めました。本書では領土問題解決の鍵も提示しています。

 第W章「裁判闘争のなかから―弁護士の仕事と裁判官の思い」。氏が担当した「日の丸・君が代」懲戒処分事件や中国人強制連行・強制労働事件(花岡事件、西松建設事件)に誠実に向き合った裁判官たちの姿を活写しています。また、8.15のポツダム宣言の受託により生まれ変わったはず(8月革命説)の日本がその後も横浜事件や天皇「不敬罪事件」で被告人を有罪としました。リベラルと見られた文化人たちも含めて天皇制の呪縛から解放されることは困難だったとして、「イデオロギーとしての天皇制は、ほとんど戦前と戦後に断絶はなかったのではないかと、考えざるを得ない。(古関彰一氏)」の文章を引用しています。他に「『狼』を知らない若者たちへ」。

 第X章「読書ノートから」。「古代より、『一衣帯水』の日本と中国」では、空海が唐の長安に滞在中密教の秘伝を授けられ帰国後真言宗を創設したことに見られるように、両国は古代から密接な関係があったことを紹介しています。「樋口陽一著『いま、『憲法改正』をどう考えるか』を読む」は、注目されている本書の理解を深めてくれます。他に「偽書『東日流外三郡誌』」。

 安倍政権は「ネジレ」が解消した今の内にと、遠慮なく戦前回帰のホンネを打ち出し改憲クーデターへの道を進めています。該博かつ緻密な資料を駆使して真っ向から切れ味鋭く切り込む氏の批判は痛快です。

【書籍情報】
2014年1月刊行。内田雅敏著。(株)スペース伽耶発行。本体2000円+税。



 

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