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書籍『日本は戦争をするのか―集団的自衛権と自衛隊』

H・T


 集団的自衛権の行使の容認に向けて今週中にも閣議決定がなされようとしています。本書は、長年に渡り日本の防衛問題を取材してきた東京新聞記者の半田滋氏による最新刊です。

 著者は記しています。「自民党が指向する新自由主義は、安倍首相の再登板によって純化されようとしている。政府機能までも市場経済に委ねようとする新自由主義は、貧富の差を広げる弱肉強食の世界である。一握りの富裕層が国富の大半を手にする米国のような国を目指そうとする為政者にとって必要なのは新たな統治機構である。それこそが『国民を支配する憲法』、すなわち自民党が新たな憲法を必要とする理由であろう」。「本書は、安倍政権が憲法9条を空文化して『戦争ができる国づくり』を進める様子を具体的に分析している」。

 まず、「憲法の番人」だった内閣法制局の長官を外務省から異例に抜擢し、意に沿った人物からなる法的根拠なき私的諮問機関である有識者会議の報告などにより、内閣の解釈で実質的に9条を変えてしまう「首相によるクーデター」で日本を法治国家から人治国家に変えようとしている過程が緻密に描かれています。昨年、政権による安保政策の転換点として設立された日本版NSC(国家安全保障会議)、軍国化の準備として不可欠の情報統制として制定された特定秘密保護法、さらには武器輸出の解禁、安全保障基本法制定をめぐる議論など、安保政策の全体像が詳しくまとめられています。

 自衛隊はこれまでは暴走せず、むしろ自重しているように見え、国内外の活動は「人助け」「国助け」に限定され、高い評価を積み上げてきたこと、これは歴代の自民党政権が自衛隊の活動に9条のタガをはめてきたからだということを豊富な資料で説明しています。著者は取材の経験から、政治家は戦争の覚悟と責任感を持っているのか甚だ疑問だと見ています。そして、海外活動の経験を積んで国際的な平和の現実的な構築を学んだ防衛省よりも机上の議論で前のめりになっている外務省の意見が優位に立ち、また、劣位の防衛省でも制服組の発言権が高まっている実態を描いています。

 1993年に北朝鮮が核拡散防止条約から脱退した際、アメリカは核開発施設の空爆を計画、第2次朝鮮戦争を想定し、自衛隊に1000項目を超える米軍への支援を要請してきました。このときは、日本政府は集団的自衛権の行使は認められないことを理由にゼロ回答しました。今後は断る理由がなくなります。政府自身も北朝鮮への「先制攻撃」を検討しています。北朝鮮からは日本に対するゲリラ活動などが予想されるなど、具体的で詳細な説明は迫力があります。

2014年5月刊行。岩波新書。半田滋著。定価:740円+税。


 

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