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書籍『国家神道と日本人』

H・T

 

 「国家神道」は解体されたのでしょうか。1945年12月のGHQによる「神道指令」によって解体されたと一般的には考えられてきました。これに対して現代の宗教に造詣の深い著者の島薗進氏(上智大学教授、東京大学名誉教授)は、「規模は格段に縮小したものの実は解体していない」と論述しています。自民党の改憲草案(前文:「日本国は、長い歴史と固有の文化をもち、…天皇を戴く国家であって」や首相の靖国神社の参拝など、天皇と神道に関する問題が大きな争点となっている現在、随所に「目からうろこ」と感じられる記述を含む重要な書籍です。

 神道の特徴は、一般の宗教と同じく民族神道、神社神道等として庶民の間で親しまれてきたと同時に、皇居内の宮中三殿を中心とした宮中祭祀として続けられてきた皇室神道でもあるところにあります。明治維新の政府はこの後者の側面を天皇を中心にした中央集権国家建設のための国民統合のシステムとして利用しました。神武天皇から始まる「万世一系の天皇の統治」(「国体」)を正統化する「国家神道」の誕生です。「国家神道」は「宗教」ではなく「国家の祭祀」として(祭政一致)、国の行事、学校(「教育勅語」など)、国民の休日制度、マスコミ、軍隊を通じて国民の間に浸透して行きます。立憲主義に配慮した伊藤博文や井上馨らの想像を超えて政治による統制が及ばない超国家主義の暴走を招きました。

 GHQの「神道指令」は、皇室神道・皇室祭祀は「宗教」ではなく天皇や皇族が私人として実践する性格を持つとして、政教分離の対象外としました。天皇の権威の温存策です。
 「解体」されたのは国家と神社神道の結合であり、皇室祭祀はおおかた維持されました。重要な大祭のいくつかの場合には内閣総理大臣、国務大臣、国会議員、最高裁判事などに案内状が届き天皇と共に礼拝しています。これは皇室の私事だという理由でマスコミは報道しません。その他政教分離が問題になる事例が多数紹介されています。
 天皇の「人間宣言」によっても、天皇は神の子孫だという国体論の重要な一角は「護持された」との指摘も注目されます。

 その後、皇室祭祀と神社神道の関係を回復し、神道の国家行事的側面を強めようとする運動が活発に続けられてきました。建国記念の日の制定、伊勢神宮と皇位が不可分だと政府に認めさせること、行幸する天皇に三種の神器を伴わせることなどです。神社本庁は、「ナショナリズムを昂揚させつつ天皇崇敬を盛り上げ、国家神道を興隆させる」ことを政治目標に掲げ活発な活動をしています。

 江戸時代の国学から現在までの諸学説や詳細な史実を踏まえた緻密な分析に基づく論述は説得力があります。「現代の憲法学において、国家神道をどのように捉えるか、長期にわたってとまどいが続いている」とし、信教の自由や政教分離の議論についても問題提起しています。

【書籍情報】
2010年7月刊行。岩波新書。著者は島薗進氏(近代日本宗教史・宗教理論研究)。定価は本体800円+税。


 

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