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特集「生きつづけられる地方都市」

H・T

 

 安倍首相は、秋の臨時国会に「地方の活性化」を目指す「地方創生」法案を提出すると表明しました。法案は、来年の統一地方選挙対策や単なる「地方の活性化」のあり方に止まらず、今後数10年に及ぶ国土・経済の構造改革や働き方・生き方の根幹に関わる極めて重大な問題をはらんでいます。

 法案は、2014年6月の閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針2014(骨太の方針)」や国土交通省が翌月に策定した「国土のグランドデザイン2050」が骨格になります。焦点は、人口の大幅な減少が予想される中で国土・地方をどのように変革するかの構想にあります。政府案は(1)2050年までに東京・名古屋・大阪の3大都市圏をリニア新幹線で1時間で結び圧倒的な競争力を持つ一つの圏域を作ること、(2)地方は「集約とネットワーク化」で効率的に再編するというものです。一言で言えば「選択と集中」です。これにより、「世界で一番企業が活躍しやすい国」にすることを目指しています。詳細については、当ホームページ 今週の一言「政府が進める地方創生をどう考えるか」(2014年9月15日) http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber/20140915_01.html
をご覧ください。

 この特集は5本の論考からなり、法案の発想に対して根本的な批判の論陣を張っています。「世界」の9月号の同趣旨の2本と一体として読まれると理解が深まります。
 岡田知弘教授(地域経済学)は、人口や所得の東京一極集中こそが若者が子どもを作れない原因の一つであり、若者が地方で働きやすい環境を整備することを求めています。金子勝教授(経済・財政学)は、政権の「成長戦略」は「地方創生」どころか地方衰退を一層加速させかねないとし、これからは逆に「地方分散ネットワーク型」に変えることを提案しています。大江正章氏(ジャーナリスト)は、「消滅する」とみなされている自治体において、逆に創意溢れる町造り、村造りで人口が増えている実例を多数紹介しています。古川美穂氏(フリーライター)は、東日本大震災の後、議論がないまま釜石市にイオンが開店し、地元の商店街の復興の妨げになっているとレポートしています。堀内重人氏(運輸評論家)は地方における公共交通の重要性を指摘しています。

 9月号では小田切徳美教授(農学)が、一時的なブームではない若者の田園回帰の強い流れを止めるなと主張し、また、TPP、道州制、東京の国際都市化の三位一体性に関連づけて政府案を批判しています。坂本誠教授(農学・地方自治)は、末端の集落を消滅させると国は逆に守れないことを論証しています。

 各論考の一部しか紹介できませんでしたが、読んでいただければ、「政府案の根源には『国民は国家のためにある』という本末転倒の価値観がある」という小田切教授の指摘が納得できるのではないでしょうか。地方を活かす政策次第で新しい幸福像と豊かな国土が見えてくる特集だと思います。

【特集情報】
「世界」2014年10月号所収 岩波書店 800円+税


 

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