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書籍『ヘイト・スピーチに抗する人びと』

S・K

 

 本書は、著者である神原元氏(弁護士)が、「ヘイト本」ブームに抗する本、ヘイト・スピーチに対するカウンター運動を後押しできるような本として出版したものです。
 第1章では、まず、著者がヘイト・スピーチのカウンター運動に参加した時の情景が、臨場感溢れる小説のようなタッチで描かれています。ヘイト・スピーチや、それに抗うカウンター運動が実際にどのようになされ、どのような成果をあげたのかをリアルなイメージと共に理解することができます。また、カウンター運動に参加している著者の心情も語られているため、カウンター運動に参加する人々がどのような気持ちで行動しているのかも推察することができます。実際にヘイト・スピーチや、カウンターを見たことのない者にとっては、かなり衝撃的な内容となっています。
 第2章では、ヘイト・スピーチの分析がなされており、ヘイトスピーチの定義をはじめ、それが「言論」といえるのか、インターネットとの関係、ヘイトスピーチを助長した原因は何かということについて、関連する安倍政権の性質等をも含めて多角的に考察しています。
 第3、4章では、ヘイト・スピーチの法規制について、@そもそも法規制すべきか否か(必要性)、A規制が憲法上許されるのか(許容性)、B規制の内容と効果、C濫用の危険性などの弊害はないのかという4つの視点から考察がなされています。
 著者は、ヘイト・スピーチの法規制は当然に必要であり(@)、憲法にも違反しない(A)という立場をとっています。ヘイト・スピーチは現行法で規制出来るから法規制は必要ないとの見解については、不特定多数に対する差別表現は、名誉毀損罪(刑法)でも、民法の不法行為としても提訴することができないし(大谷實『刑法講義各論』第4版補訂版149頁、石原ババア発言に関する東京地裁平成17年2月24日判決)、理論的に脅迫罪では規制可能のようにみえるが、被害者が特定されない脅迫行為では、警察が受理することはないとしています。 また、Bに関しては、規制は「刑法」ではなく、「差別禁止法」の中に置き、規制対象を「自己の民族的アイデンティティーを保持する権利」を侵害する程度に深刻なものに限定すべきであるとの提案をしています。 Cについては、自民党の高市早苗政調会長(当時)が、「国会周辺での大音量の街宣やデモに対する規制も合わせて議論すべきだ」等と述べたことなどを挙げ、現在のヘイト・スピーチ規制論議の危うさや弊害の恐れ、さらには運用に関する懸念についても考察しています。その上で、私たちは対案と2つの原則(「マイノリティー保護の趣旨が明らかでそのために要件が絞られていること」「他の運動(反原発運動、平和運動、その他)への悪影響がないこと」)をもって規制議論に向き合っていくことが必要であるとの提言をしています。
 第5、6章では、野間易通氏(「レイシストをしばき隊」創設者)、水野寿紀氏(「プラカ隊」呼びかけ人)、山下歩氏(「差別反対女組」代表)、清義明氏(スポーツジャーナリスト)へのインタビューを通して、カウンター運動の意義や今後の活動、ヘイト・スピーチ問題に取り組む意味等が語られています。 
 ヘイト・スピーチ規制については、様々な見解がありますが、議論の前提としてまず、現状を知り、どのような活動がなされているのかを知ることは重要であると思います。本書がヘイト・スピーチ問題についての読者自身の考察を深めるきっかけになればと思います。

【書籍情報】
著者は神原元さん(弁護士)。2014年12月、新日本出版社から刊行。定価1600円+税。



 

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