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論文「歴史認識問題と戦後70年の課題」

S.K

 今年、戦後70年を迎えるに当たり、安倍首相は新しい首相談話を発表する意を表明しています。そのような中発表されたこの論文では、戦後50年に当たって出された村山富一首相談話、1993年の河野洋平官房長官談話、1982年の宮沢喜一談話、という3つの談話に対する安倍首相の策動を明らかにし、それらに極めて理論的な批判を展開しています。その上で、今まで戦後日本の歴史歪曲がつづいてきた要因を説得的に論証し、私たちに残された課題を明らかにしています。
 まず、村山談話に関して安倍首相が「特に侵略という定義については、学会にも国際的にも定まっていない」と発言したことに関し、1920年以降国際的に「侵略」がどのように定義され、認識されてきたかを説明し、1974年の国連総会の具体的な定義を指摘するとともに、第1次安倍内閣時に発足した日中歴史共同研究の報告書においても、日中両国の歴史研究者間でも日本の武力行使が「侵略」であったという認識で一致していることを指摘しています。
 さらに、安倍首相の発言を受けてなされた、育鵬社版歴史教科書の編集会議座長でもある伊藤隆東大名誉教授や八木秀次氏の新たな虚言についても誤りを指摘した上で、今年7月17日に出された74人の歴史学者、国際法学者、国際政治学者の共同声明を高く評価しています。
 「慰安婦」問題への日本軍の関与を認めた河野談話については、中学教科書の「慰安婦」の記述から、偽りの理論を巧みに重ねて河野談話を事実上なきものにしようとする策動を明らかにしています。1996年には中学歴史教科書7社全てにあった「慰安婦」の記載が、右翼勢力による攻撃の激化、政府見解に基づいて書く事を求める「検定基準」の新設などによって、ついに消滅してしまったことを示した上で、このような策動に対する国際社会の勧告、民主主義・学問・表現の自由などからのもっともな批判が展開されています。
 宮沢喜一官房長官談話については、この談話により教科書検定基準に「近隣諸国条項」が追加され、以降侵略戦争と植民地支配の記述の修正・削除を防いだものであったことを紹介しています。その談話をいま安倍政権は、検定基準や検定審査要項の変更という手法によって無効化しようとしていると指摘しています。
 さらに、この論文では、日本のアジア侵略の歴史に中で作られてきたアジア蔑視の意識、アジアと世界の覇権を握りたいアメリカの意図、中国、朝鮮半島、アジア諸国それぞれに対する戦後処理の経緯などを戦後史の流れの中で考察することにより、植民地支配と侵略戦争についての国民の歴史認識を歪め、同時にアジア諸国および在日の人々も含むアジア諸国民との正常な関係を作り上げることを妨げてきた要因を明らかにしています。
 戦争の後始末ができなかった戦後日本の歴史を学ぶことの重要性や、北東アジアの永続的な平和を築くために私達が克服すべき大きな課題を浮き彫りにする論文です。

【論文情報】この論文は、「月刊 憲法運動」通巻443号(2015年8月)に収載されています。筆者は石山久男(歴史教育者協議会前委員長・憲法会議代表幹事)。


 

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