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論文「憲法とテロ対策立法」

H・O

 パリで同時テロが発生し、日本でも様々なテロ対策が講じられています。このテロ対策という問題について、それを憲法の規定と精神からどのように考えるべきかを問う論文です。2009年に刊行された森英樹編『現代憲法における安全−比較憲法学的研究をふまえて』(日本評論社)に収載されたものですが、いまなお重要な問題提起となっています。
 論文は、テロリズムと通常の犯罪行為との区別をなしうるか、という論点を提起しています。テロ対策立法は「テロリズムは通常の犯罪とは異なるのだ」という前提に立って検討され、多くの人々もそう思う状況に警鐘を鳴らします。そして、そもそもテロリズムとはなにか、というその定義が直目されるべきことを説き、テロ対策が政治的な思想や信条を罰するということになっていることに注意を喚起します。また、諸外国のテロ対策法制が近代憲法の拠って立つ人権保障や刑事司法の諸原則と矛盾・衝突している状況を7点にわたって整理・分析します。
 論文は、テロ対策の問題を日本国憲法に照らして考える際には、憲法に定める人権保障、民主主義的な国家体制とテロ対策とのバランスをいかにはかるかがそのポイントになる、としています。そして、そこで問題になるのが「安全への権利」ということをどう考えるか、だとしています。人々には「安全」に暮らす権利があるという主張は否定できません。しかし、「安全」であること、すなわち「危険(おそれ)のないこと」をどう実現し得るのかを考える時、「安全」の確保を理由とする個人の自由の制約には明確な基準が必要であり、そしてそれは必要最低限でなければならない、と主張します。その観点からテロ対策の焦点の一つとなる、共謀罪創設の動きをも批判します。
 論文は冒頭で、テロが発生するとテロ対策の迅速な推進に少しでも消極的な立場が批判される状況の危うさを指摘しています。テロは許されない行為ですが、その対策・立法については冷静に考える必要があるでしょう。映画監督の森達也さんが『「テロに屈するな!」に屈するな』(岩波ブックレット、2015年9月)を出版しましたが、そのタイトルには重要な意味があると思われます。

【論文情報】
筆者は木下智史・関西大学教授(憲法学)。森英樹編『現代憲法における安全−比較憲法学的研究をふまえて』(日本評論社、2009年)所収。

<法学館憲法研究所事務局から>
当ページではこれまでも憲法に定められた人権や刑事手続きに関する書籍・論文等を紹介してきました。下記ページなどで確認できます。ご案内します。
 「個人の尊重・幸福追求権」を考える書籍や映画
 「刑事手続き・裁判員制度」を考える書籍や映画


 

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