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書籍『日本は本当に戦争する国になるのか? 』 

S・K

 集団的自衛権行使容認の閣議決定に引き続き、昨年は安保法制が強行採決され、多くの市民が日本は本当に「戦争をする国」になるのではないかと不安抱いています。そんな中、漠然とした不安を抱えるのではなく、国民一人ひとりがこれらの問題と正面から向き合い、この国の未来を自分で判断するヒントとして出版されたのが本書です。
 著者は、法律制定過程において、憲法論議と安全保障論議が同時に展開されたため、一般の人たちに極めて理解しにくいものになったことを指摘し、本書で改めて論点を整理して解説しています。
 安保法制について賛否の偏った記事しか掲載しない国内メディアに苦言を呈する著者らしく、賛成派と反対派両者の主張を紹介し、政府や賛成派の意見については、憲法改正手続きをするのが筋であるにもかかわらず、憲法学者・有識者の見解を軽視し、あえて憲法論議を遠ざけて、解釈改憲で強引に行使を可能にしてしまったことを批判する一方、反対派については、今の東アジアの情勢についてどうするのかという点がはっきりしない点で賛成派から不満が出てくるのだろうと指摘しています。
 民主主義や立憲主義を蔑ろにする内閣の手法や、集団的自衛権すら合憲とする理屈をつくった内閣法制局、前代見聞の首相の野次などについては批判していますが、安全保障のあり方については中立的な立場で書かれています。
 また、安保関連法の解説に関しては、11法案の一括審議はあまりに無謀であったと指摘しつつ、これらの法律によって可能となる行為のポイントが簡潔に説明され、これからの自衛隊の活動がどうなっていくのか、戦争のリスクはどうなるのかが説明されています。法案審議では非現実的なホルムズ海峡の機雷除去の話ばかりだったが、現在の米中間の緊張関係や海上自衛隊の合同訓練の状況からすれば、自衛隊が南シナ海で中国と戦うシナリオに現実味があると指摘し、安保法制の成立に対する近隣諸国の反応も簡単に紹介されています。
 尖閣諸島問題に関しては、個別的自衛権の問題であって今回の安保法案とは何の関係もないことを説明しています。また安保関連法がアーミテージ・ナイ報告書の対日要求に従ったものであることを指摘し、原発の再稼動、TPP締結、日韓の歴史問題解決への努力など、安倍内閣の取組みが報告書の要求通りであることを明らかにしています。
 反対運動の新潮流としてSEALsをはじめとする若い人たちの運動を紹介し、意見の内容はどうであれ、政府の方針に反対であれば街頭へ出て反対運動をすることは民主主義国においては権利であり、当たり前のことであって、それぞれの人が自由に意思表示できることも民主主義の重要な一面であることを強調しています。
 安保関連法の違憲訴訟については、付随的違憲審査制の説明をした上で、今回の法律を根拠として自衛隊員が何らかの任務について死傷し訴訟が提起された場合、裁判所は審理することになるが、最高裁判所はいままで統治行為論を用いて憲法判断を回避してきたことや、安倍政権が内閣法制局の山本長官を追い出し、小松長官を据えた件を紹介し、違憲判決が出るかは微妙であるとの見解を述べています。
 全体を通じて新しい事実や見解は述べられていませんが、新書で読みやすく、大変わかりやすく説明されていますので、選挙を前に一人でも多くの学生やいままで政治に関心の無かった人たちがこの本を読み、憲法や民主主義を考え、行動してもらえることを期待しています。
【書籍情報】 2015年12月、SBクリエイティブ株式会社から刊行。著者は池上彰。800円+税。

<法学館憲法研究所事務局から>
 当ページではこれまでも、安全保障自衛隊とその改編集団的自衛権国民主権・民主主義などに関わる様々な文献を紹介してきました。ご案内します。


 

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