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書籍『民主主義をどうしますか。』 

M・I

 政治学者である山口二郎法政大学教授の最新評論集です。時期的には、第2次安倍政権成立の2012年末から安保法制施行の2016年までの論考が収められています。この間に集団的自衛権の行使を認めた7.1閣議決定、安保法制審議、国会での長谷部恭男教授ら憲法学者の参考人3名の安保法制違憲発言、国会前でのデモの盛り上がり等々がありました。
 著者自身が本書を語っています。「本書は、安倍政治と戦うための理念、政策、運動を考える材料として、第2次安倍政権発足以後の私の政治評論を集めたものである。」
著者の現政権に対する嫌悪振りは、「今は、安倍のような為政者に統治されること自体を拒絶したいという気分である。その理由は(略)為政者が異論、反対の存在を否定しているという点と、権力者といえども上位の規範に服従しなければならないという立憲主義の基本理念を理解していない点の2つである」と明らかです。
 本書は、第1章「民主主義と立憲主義」、第2章「安倍政治とは何か」、第3章「民主主義の主権者であること」から構成されていますが、読み応えのあるのは第1章です。その中に、2015年7月13日に衆議院「平和安全法制に関する特別委員会」の中央公聴会における著者の意見陳述が収録されています。
 陳述は、「戦後日本が戦争に巻き込まれずに済んだのはなぜか。それは、緊密な日米同盟のおかげではなく、日米安保条約の下、日本が集団的自衛権の行使を禁止していたからであった」と明解です。更に「日本は自らの安全を確保するために、集団的自衛権の行使に転換する必要があるのだろうか。答えはノーであると私は考える。日本の領域を守ることは、個別的自衛権によって対処すべき課題である」と続きます。結論は「そもそもこの法案は、専守防衛を逸脱するものであり、憲法違反である」となります。
 また最新の論考では、「安倍が覆したのは安全保障政策だけではない。日本の民主政治、議会政治における作法、常識をも否定したということができる。民主政治において多数意思が多数決を通して全体の意思とされることは当然である。しかし、それには多数決の手前で賛成、反対の両側の人間が議論を尽くし、手続きを全うするという前提が不可欠である。しかし、安保法制の審議における安倍政権の答弁は、質問にまともに答えるという姿勢が全く欠如していた。日本の憲政史上最悪であり、議会から言葉が失われたということができる」と民主政治の破壊を非難しています。
 しかし、事態は絶望的ではありません。「安倍の反対方向のベクトル」として「新しい政治文化の創出」があったからです。それは「安保法制反対運動の中で、SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)に代表される新しい市民運動が出現した」ことです。この意義を著者は「民主主義は国民・市民の参加によって共同体の意思決定を行う仕組みである。自分たちの思いを政策決定者に伝達する参加には、選挙以外の様々な方法がある。デモや集会もその1つである」と語り、「一言で言うなら、安保法制反対運動の中から、民主主義を支える能動的な主体がようやく日本でも出現したということである」と評価します。
 最後に、2015年8月30日の安保法制反対全国一斉行動の際の国会前における著者のアジテーションを紹介します。「昔、(「破れ傘刀舟 悪人狩り」という)時代劇で萬屋錦之介が悪者を成敗するとき、『てめぇら人間じゃねえ!たたき斬ってやる!』と叫びました。私も同じ気持ちです。(略)安倍に言いたい。『お前は人間じゃない!たたき斬ってやる!』民主主義の仕組みを使ってたたき斬りましょう。たたきのめしましょう。」
【書籍情報】
2016年4月に七つ森書館より発行。著者は山口二郎法政大学教授。定価は1800円+税。
http://www.pen.co.jp/book/b221985.html
【関連書籍】
樋口陽一・山口二郎編『安倍流改憲にNOを!』(岩波書店)
http://www.jicl.jp/now/ronbun/backnumber/20150831.html
奥平康弘・山口二郎編『集団的自衛権の何が問題か—解釈改憲批判』(岩波書店)
http://www.jicl.jp/now/ronbun/backnumber/20141013.html
http://www.jicl.jp/now/ronbun/backnumber/20141020_02.html
<法学館憲法研究所事務局から>
・この書籍の著者の山口二郎教授は以前当サイトで「今週の一言」にもご寄稿いただいています。
http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber/20141103.html

 


 

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