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書籍『「戦争のできる国」ではなく「世界平和の要の国」へ』

M・I

 驚くべき一冊です。第T部「『戦争への国づくり』ではなく『平和への国づくり』へ」は、鳩山友紀夫(由紀夫)元首相の講演をまとめたもので、第U部「辺野古新基地即時断念、対米従属脱却が日本を救う」は、鳩山元首相とジャーナリストの金平茂紀氏と元外交官で評論家の孫崎享氏の鼎談です。
 何と言っても圧巻は第T部の中で、元首相自身が語る「最低でも県外、できれば国外」を公約にしていた普天間飛行場の移設問題です。この沖縄県民の圧倒的支持を得た公約が、なぜ挫折してしまったのか。
 2009年末、奄美大島の徳之島の町長が、秘かに普天間基地の代替地に名乗りを上げます。鳩山首相は、「最低でも県外」を僅かでも実現できないかと模索します。
 2010年4月19日、3枚の文書を持った外務省北米局日米安保条約課と防衛省日米防衛協力課の役人が総理公邸を訪ねます。彼らはアメリカ大使館で米軍の在日部長と普天間のことで会談し、アメリカ側から説明を受けた内容をまとめた文書を持参していました。それは「普天間移設問題に関する米側からの説明」というタイトルが付いた文書で「極秘」の押印がありました。その文書には、訓練の一体性について書かれていました。すなわち沖縄の海兵隊が訓練をする場合、沖縄北部の北部訓練場や中部訓練場で訓練するわけですが、普天間の移設先とこの訓練場との間があまりにも長いとヘリコプターで時間がかかり過ぎて、訓練が十分にできなくなり問題だと書かれていました、そしてその限界の距離が「65海里」(約120キロ)となっていました。そして、「65海里」は、米軍のマニュアルにも明記されていて、念のため調べたが、この基準を超えた例は世界的にないとも書かれていました。沖縄の北部、中部の訓練地域から半径120キロの円周以内でないと代替地が作れないことになります。奄美大島の徳之島は192キロです。これでは沖縄県内しかありません。沖縄の外には出られないのです。これが鳩山首相の普天間飛行場の県外移設断念の決定打となりました。沖縄の中でとなると辺野古しかありません。結局、沖縄県民の大激怒の中、「最低でも県外、できれば国外」の公約違反は明らかになり、鳩山内閣は退陣を余儀なくされました。
 その後、民主党政権は崩壊し、安倍政権が復活した年の翌2013年、琉球新報の調査で「65海里」の基準が、米軍のマニュアルに明記されている事実はないことが判明します。更に先の文書には、「65海里」の基準を超える例は全世界的になく、最も距離のある例でも「35海里」であると書かれていたのですが、米本土にヘリ部隊基地から84海里離れた海兵隊地上部隊の訓練場が存在することが判明します。現在、基地建設が動き始めているグアムとテニアンの距離もこの基準を超えています。つまり「65海里」の基準などなかったのです。ではあの「普天間移設問題に関する米側からの説明」というタイトルの文書は何だったのか。この極秘文書に関する外務省の正式な答弁は、「存在は確認できなかった」というものでした。もう「怪文書」です。外務・防衛官僚のおぞましき暗躍だったのです。まんまと時の総理が騙され、辞職に追い込まれたのです。
 この他、元首相が「面従腹背極まれり」と述べている官僚の背信、また、二人きりの会話で、オバマ大統領に「トラスト・ミー」と発言した真意(「自分自身(鳩山氏)を信じてくれ」といったものが、「最後はアメリカの言うとおりに辺野古に戻すから信頼してくれ」と言ったとメディアに流れた)など、当時の報道では知りえなかったエピソードが次々と現れます。そして現在の元首相が最も力を入れている「東アジア共同体」構想が語られます。実に説得力ある平和のための構想で、ここも必読です。
 第U章は、鳩山元首相に元外交官で評論家の孫崎享氏とテレビ・ジャーナリスト金平茂紀氏を交えた鼎談で、普天間移設問題、メディアの劣化、日米地位協定、TPP問題などが、鋭い切り口で熱く語られます。第T章、第U章あわせて現在の日本の抱える問題点を考えさせる良書と言えます。

【書籍情報】

2016年5月に、あけび書房より発行。著者は金平茂紀、鳩山友紀夫、孫崎享。定価は1500円+税。

【関連書籍】

孫崎享『戦後史の正体 1945−2012』(書籍情報社)
孫崎享『不愉快な現実—問題を直視できないこの国の瀬戸際』(講談社現代新書)

 


 


 

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