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書籍『憲法と政治』

M・I

 気鋭の憲法学者による力作です。著者の青井未帆学習院大学大学院法務研究科教授は、本書において「憲法と政治」をテーマに、平和の問題を実力の統制という観点から考察しています。第一章の「私たちは何を目撃したのだろう」では、「集団的自衛権行使を容認する違憲の閣議決定の上に、違憲の安保法制が成立させられ、日本の立憲主義は大きく傷つき、憲法の『規範としての力』が削がれた」と危機感をあらわにしています。
 最も読み応えのあるのが第六章「憲法解釈と裁判所」です。著者は「ここ数年に特に顕著であったのは、『政治が目的達成のために、法の論理を力ずくで乗り越える』ということだった」と指摘し、「そのための手段として法律制定や法律改正が用いられたのであり、法は政治も従う『矩(のり)』というより『道具』としての性格を強めた。そして内閣が政治の中心として駆動する一方で、国会が単なる下請け機関であるような様相をさらに強めている」と述べ、安保関連法整備は「政治がやっていいことを超えてしまった」とします。そして「これは、政治を法で統制する具体的な方法や仕組みそのものの問題であ」り、「統治機構をどう動かしてゆくか、公務員や法曹集団など法にたずさわる者が、憲法を頂点におく憲法秩序をどう維持していくかという大きな話でもあるはずだ」と述べ、このような問題関心から「政治と法の関係を裁判所の役割という視点から」問い直しています。
 この裁判所の役割とは何か。それは憲法訴訟における憲法保障機能です。著者の見立てによれば「裁判所は、憲法保障機能をはたすことについて、以前より積極的になっているように見える。それは一人一票訴訟での積極的な姿勢に典型的に現れていることだろう。」そこで安保法制違憲訴訟です。著者によれば「二〇一五年の安保関連法制は、憲法九条の下では成立する余地のない『一見極めて明白に違憲無効』の違憲の法律である。今回『成立』した法は、憲法改正のショートカットであり、本来は法律制定によりなしうる内容ではなく、また国会が自らの立法権をある意味で放棄するようなことをして、強行に成立させてしまった。」となれば、「司法府には、統治機構の上で負っている憲法秩序の維持という任務から、一定の役割を果たすべきと考えられて然るべきなのではないか。」
 司法権もまた政治権力であり、「憲法八一条に明文で規定された司法審査権は裁判所の権限であり、裁判所に他権力の統制による憲法秩序の責務を負わせている」のである。「裁判所が事後的に政治のなしたことの正しさのチェックをする必要性は高まるばかりである。動態的な憲法秩序の維持の一部としての役割を果たすことへ、期待が高まっているというべきであろう。」
 そして「裁判所が、権力の統制という任務に真正面から向き合うようになるかどうかは、市民が裁判所の背中を押し、支えることができるかがポイントになる」。そこで結論です。「少しでも日本で良い政治が行われるよう政治に参加し、また国会に対して、裁判所に対して、そして法に関わる専門家に対して、法秩序を維持する上でのそれぞれの職責を果たすよう、市民として求めてゆきたい。」
 そう、「『平和国家』という理想を掲げる日本が、これからどれくらいその理想を現実のものとできるかは、国民各自が、自らの心に平和への強い希求を持ち続けることができるかが、カギを握っている」のです。平和憲法を持つ日本国民必読の一冊と言っていいでしょう。

【書籍情報】
2016年5月に、岩波書店より発行(岩波新書)。著者は青井未帆学習院大学大学院法務研究科教授。定価は840円+税。

【関連書籍】
青井未帆『憲法を守るのは誰か』(幻冬舎ルネッサンス新書)
奥平康弘・愛敬浩二・青井未帆編『改憲の何が問題か』(岩波書店)

 


 


 

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