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書籍『高校生のための選挙入門』

M・I

 選挙権が、初めて18歳から行使できるようになった第24回参議院選挙が行われました。投票率は18歳が51.17%、19歳が39.66%、18〜19歳が45.45%でした。初めての選挙権に戸惑ったのか、勉強不足だったのか、いささか残念な結果です。もっとも全体の投票率も戦後4番目に低い54.7%ですから、若者だけを責められません。これからは、選挙に関する知識が高校生に必須となります。本書はその意味でも時宜を得た一冊と言えます。
 「はじめに」から異色で、実際の投票所での投票方法を投票所入場券などと共に紹介しています。「投票用紙は2つに折って、投票箱に入れます」など、確かに投票所に行ったことのない高校生には勉強になります。
 第1章は「選挙の基本」で、日本の選挙制度が取り上げられています。衆議院総選挙ならば、小選挙区選挙と比例代表選挙、参議院通常選挙ならば、選挙区選挙と比例代表選挙です。これらの違いは大人でも説明できる人が少ないでしょう。更に「1人1票」、1票の格差について分かりやすい解説があります。「外国人の選挙権」では、地方選挙における選挙権は憲法上禁止されていないという最高裁判決や、川崎市の「外国人市民代表者会議」まで紹介し、高校生に考えさせる内容となっています。また留学する高校生が留学先で投票できるかという疑問には、在外投票制度と洋上投票制度を紹介しています。                                              
 注目は、今回の参院選の争点にもされた憲法改正です。本書では一つの章を割いて、憲法改正のための国民投票について解説しています。憲法改正国民投票の流れだけでなく、「国民投票法の『落とし穴』」として、最低投票率が定められていないこと、国民の承認があったとされる「過半数」のカウント方法の二つが挙げられています。ここはしっかりとした指摘になっています。
 第2章「高校生のための選挙運動」も高校生に役立つ知識満載です。例えばLINEの友だちから、今度の選挙でX候補をよろしくと言ってきた場合、候補者から一票1000円で買うと言われた場合、同級生の母親が立候補するので、友だちの家を回って、投票のお願いをする場合等々、身近なケーススタディによる実践的公職選挙法入門となっています。また解禁されたインターネット選挙についての解説もあります。
 第3章「高校生のための政治活動」は、そのものズバリの高校生の学外・学内での政治活動と表現の自由についての章です。気になる内申書との関係では、もはや「語り草」の麹町中学内申書事件が取り上げられています。「制服デモ」では、最近のT-ns SOWLの安保法制反対デモなどまさしく「民主主義って何だ?これだ!」がわかる内容になっています。
 本書で特筆すべきなのは、11本のコラムです。「定時制高校の生徒にとっての選挙」「女子高生よ、まずは選挙に行こう!」など読み応えのあるコラムばかりですが、中でも「アダムズ方式って何?」は秀逸です。1票の格差是正のための定数の割り当て方式なのですが、新聞でよく掲載される解説記事ではいつもピンと来なかったのですが、本コラムでは実に具体的かつ明解に解説されています。さらにこの方式を提案したアメリカのアダムズ大統領にも言及しています。
 このように本書は、選挙権のみならず表現の自由、思想・良心の自由など憲法からの視点で執筆されています。今回選挙権を得た高校生にも、これから選挙権を得る高校生にもぜひ読んでもらいたい良書です。

【書籍情報】
2016年7月に、三省堂より発行。編者は、斎藤一久東京学芸大学准教授。定価は1200円+税。

【関連書籍・論文】
西原博史・斎藤一久編著『教職課程のための憲法入門』(弘文堂)

<法学館憲法研究所事務局から>
・この書籍の編著者の斎藤一久さんは以前当サイトの「憲法を観る」などにもご寄稿いただいています。


 

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