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書籍『泥沼ニッポンの再生—国難に打ち克つ10の対話』

M・I

 法学館憲法研究所の伊藤真所長と経済学者の植草一秀氏との対談集です。サブタイトルにあるように全10章から成っています。第1章「史上最大の危機」では、第二次安倍政権成立後の日本が語られます。伊藤所長は「日本は国民主権国家の体をなしていない。いま、ますますそれが溶解していく状況にあるのではないかと、非常に大きな危機感を抱いている」と指摘します。例えば集団的自衛権の行使容認、国民に知らされていないTPP交渉などです。更に伊藤所長は、日本国憲法が「押しつけ憲法」と言われるようになった背景を語り、それが全くの間違いであることを指摘します。そして憲法九条と自衛隊を語り、限定的でも集団的自衛権を認めるのは明白な憲法違反であるとし、植草氏は、日本国民が国民主権や憲法を守る意識が低いのは、江戸時代以来の「お上と民の精神構造」にあると指摘します。伊藤所長は、歴史的なものに加えて、国民主権の教育がきちんと施されてこなかったと応じます。
 第2章「三権分立が機能していない日本」は原発の話から始まります。伊藤所長は、原発は幸福追求権、平和的生存権を侵害し、憲法違反であるとします。植草氏は、三権分立よりも内閣総理大臣の権能が一段上位に来ていると指摘します。
 第3章「緊急事態条項と本当の民主主義」では、自民党の改憲草案にある緊急事態条項の危険性が語られ、伊藤所長は、本当の民主主義とは選んだ人を監視し続けていくことであり、自己決定権の政治への反映が民主主義なのだと指摘します。
 第4章「主権の喪失を意味するTPPへの参加」では、医療や農業をはじめ日本市場を完全な支配下に置こうとするグローバルな強欲巨大資本の危険性が語られます。
 第5章「国家なのか、国民なのか?」では、伊藤所長が「国家が目的、国民が手段」と戦前の発想をする安倍政権を批判し、植草氏がアベノミクスの失敗を詳細に語ります。
 第6章「亡国の道をひた走る安倍政権」では、植草氏が財務省のいう日本の「財政危機説」が国民をだますウソであることを暴きます。伊藤所長は、源泉徴収こそ納税者意識を希薄化し、主権者意識の希薄化と連動することを指摘します。
 第7章「メルトダウンするアベノミクス」では、植草氏が日銀の金融政策を批判し、「アベノミクスの最大の問題は、これが主権者国民の幸福を追求するものではなく、一握りの強欲資本の利益拡大を追求するものであることだ」と本質を衝きます。
 第8章「すべてを解決する『一人一票』の実現」では、伊藤所長が「一人一票」は「一票の格差」すなわち憲法一四条「法の下の平等」の問題ではなく、民主主義の本質に関わる問題であることを解説します。
 第9章「教育とメディアリテラシー」では、日本の教育制度とNHKの政治権力機関化などのメディアの問題点が語られます。
 第10章「ゆっくり急げ!」は、伊藤所長の座右の銘「Festina Lente」(ゆっくり急げ)が紹介され、「一人一人の個人の幸せのための国家になっていくためには、何があろうと、『Festina Lente』で、最後まで絶対にあきらめないで、できることから人々が声を上げ、漸進するしかない」と結ばれます。
 このように本書は、自分の興味がある章から自由に読み進むことができ、更に法律の知識や経済の知識に自信がない読者にも平易に読みこなせる構成になっています。現代社会を読み解く優れた教養書と言えるでしょう。

【書籍情報】
2016年7月に、ビジネス社から発行。著者は伊藤真、植草一秀。定価1400円+税。




 

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