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書籍『対米従属の謎 どうしたら自立できるか』

M.I

 戦後の日米関係を表す政治用語の一つに「対米従属」があります。ジャーナリズムの現場で実に多く使われたにも関わらず、改めて対米従属とは何かと聞かれれば、どうもはっきりとは答えられないというのが大方の反応でしょう。
 本書は、ジャーナリストであり、「自衛隊を活かす会」事務局長でもある松竹伸幸氏が、タイトル通りズバリ「対米従属の謎」(原因と背景)に迫ります。
 第一章「従属の現実—世界に例を見ない実態」では、沖縄などの米兵の犯罪を取り上げます。驚くべきことに最近2008年から13年まで米軍人による事件・事故は324件起こっていますが、裁判にかけられた者は、何とゼロです。また、在日米軍は日本に知らせずに飛行訓練を我が物顔に実施しています。これらの例は、よく知られた日米地位協定の結果ですが、地位協定をドイツやイタリア、フィリピンと比較すると、日本のみが一方的に不利益な立場に置かれていることが明らかにされます。
 第二章「従属の原点—日本とドイツの占領の違い」では、先の大戦の敗戦国である日本とドイツでなぜこのような差が出てきたのかが明かされます。興味深いのは、筆者に言わせれば、日本はアメリカの「間接占領」で、軍国主義者だった吉田茂や公職追放された鳩山一郎、A級戦犯容疑者の岸信介などが戦後の政府を作りました。これに対してドイツは連合国軍隊の「直接占領」で、戦後の政府は反ヒトラーの人物ばかりで戦争犯罪者とされた人物が政権に就くことはなく、日本のようにアメリカに対して卑屈になることはなかったとの指摘です。これは一理ありそうです。
 第三章「従属の形成—『旧安保条約の時代』の意味」では、独立回復後の日本が「主権国家の体裁をとった従属国家」であることが明かされます。旧安保条約では、アメリカに日本を防衛する義務がなかったことはよく知られていますが、駐留米軍の裁判権まで放棄した屈辱的なものだったことがわかります。
 第四章「従属の展開—新安保でも深化したワケ」を読むと、当時の岸首相の目指した新安保条約による自主性の回復とは裏腹に、旧安保条約下のアメリカの特権は新安保条約下でも「慣行」として残り、有名なあの「事前協議」もアメリカの言いなりになっていきます。そして「どんなものであれアメリカの軍事行動が日本の平和にとって大事だということになれば、日本にはアメリカの軍事行動を支持するしか選択肢がなくなります。」このあたりかなり情けない。
 第五章「従属の深層—独自戦略の欠落が背景に」では、日本がアメリカの核抑止力依存政策を採用したところに対米従属の深層があることが遂に暴かれます。そして「言葉の本来の意味での専守防衛は、冷戦後の世界にふさわしい戦略だ」との理論が展開されます。本書では一番読み応えのある章です。
 トランプ米新政権の発足する今、日米関係をじっくりと考え直したい読者に最適の一冊となっています。

「自衛隊を活かす会」

【書籍情報】
2017年1月に平凡社より発行(平凡社新書)。著者は松竹伸幸氏。定価は800円+税。
【関連書籍・論文】
松竹伸幸『歴史認識をめぐる40章 —「安倍談話」の裏表』(かもがわ出版)
松岡伸幸『集団的自衛権の商店 —「限定容認」をめぐる50の論点』(かもがわ出版)




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