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書籍『大メディアの報道では絶対わからない どアホノミクスの正体』

M.I

 アベノミクスを当初より「アホノミクス」と斬って捨てた経済学者の浜矩子・同志社大学大学院教授と辛口評論家の佐高信氏との痛快対談です。そして今回、アホノミクスと名付けることさえ過大評価だったとして、遂に「どアホノミクス」と断罪するに至ったのです。
 第1章「アホノミクスは戦争国家をつくる政策である」は、安倍首相、黒田日銀、御用学者たちによる「チームアホノミクス」がこの国をどうしようと目論んでいるかが明らかにされます。浜教授は、安倍首相自身の演説からアベノミクスの正体が軍備増強と富国強兵だと指摘します。その先棒担ぎをやっているのが黒田日銀です。本章では、日銀が中央銀行である本分を失っている様を佐高氏が指摘します。かつては骨のある総裁が何人もいた日銀はなくなり、政府と一体化してしまったのです。浜教授も同意見で「今日存在する世界の中央銀行をランキングすれば、今の日銀はまちがいなく最下位ですよ。政府べったり、市場べったりで、通貨の番人としての位置づけなどは忘却の彼方ですね」とこれも手厳しい。
 第2章「貧困が抵抗に向かわず、独裁を支えてしまう理由」では、佐高氏が「トランプが大統領になってしまった背景には、やはり格差と貧困の深刻化と、それが秩序を変えるほうにではなく、独裁を支持する方向に行ってしまうという極めて危機的な問題があります」と指摘。浜教授も「アメリカの精神は、ある時点から発展を止めてしまったようにすら思える。アメリカという国は、決して淘汰の論理だけで動いていたわけではなく、共同体の助け合いの力を持っていたはずなんです。どこかでそれを置き忘れてきた気がします」と、オバマケアを覆していくアメリカに警鐘を鳴らします。
 第3章「人間と人間の出会いとしての経済」では、浜教授がグローバルという言葉を再定義し、「グローバルな時代こそ、ナショナルなものではなくて、ローカルなものが前面に出る。ローカルなもの、地域共同体的なもののほうが、人間が人間らしく生きている姿だとすれば、むしろグローバル時代はもっと人らしく生きられる時代になってしかるべきだと思うんです」と述べ、これが浜経済学の真骨頂です。
 第4章「地域通貨が安倍ファシズムに反逆する」では浜教授が、「あらゆる物事がどんどん偽物になっていく状態をチームアホノミクスはつくっている。日本円はどんどん偽物化していき、日本国債はもともと限りなく偽物に近いものでしたが、正真正銘の偽物になった。経済政策だって極めつけの偽物です。経済政策の顔をしながら、軍備増強のためにやっている。労働者のためのではない労働法制の改変も偽物です。何一つ本物がない状態になってきつつある」と辛口佐高氏を上回る怒りのエコノミストとなっています。
 第5章「マルクスの『資本論』は現在にも有効か」は、アダム・スミスやマルクスも登場する教養の章です。浜教授は「人間はどうあるべきかという問いを抜きにして経済学は成り立ちません」と指摘し、経済の寄生虫の如き経済学者を批判します。ここで浜教授の一橋大学の学生時代、同じ経済学のゼミの「二年先輩に竹中平蔵がいたという驚くべき事実がある」との告白があります。さらに「一橋大学のキャンパスで彼を見たことは一度もありません。(中略)竹中がいかに、まともな経済学をまともに勉強していなかったかがわかるというものですよね」との大暴露付きです。
 第6章「『反格差』『反貧困』思想とキリスト教」で浜教授は、新自由主義者のいう「規制緩和を言い換えれば、野蛮化ということです」と指摘、「規制緩和と構造改革という二つの言葉が出てくるときは、人権侵害をしていい状況をつくろうと言っているのに等しい」と本質を衝きます。
 第7章「安倍晋三は大日本帝国会社の総帥か」では、「メディアが横並びにアホノミクスの流れに乗らされている」とメディア環境への批判が繰り広げられます。メディアの人間の聞く力の低下の一例として挙げられているのが、2016年6月1日に安倍首相が消費税の増税再延期を発表した時の記者会見です。日銀がマイナス金利政策をやっている真っ最中なのに、「現行のゼロ金利環境を最大限に生かし」との安倍発言に対し、記者の一人として「総理、現下はゼロ金利ではなくマイナス金利ですよね」とか「マイナス金利をやめるということですか」と詰め寄る者がいなかったのです。更にこの「ゼロ金利環境」という誤った発言に対して、読売新聞、日経新聞は触れず、朝日新聞、毎日新聞は触れたが誤りについてはスルーし、誤りの指摘したところはなかったとのことです。確かにジャーナリズムの劣化と言えそうです。
 最後の第8章「アホノミクスをどう叩きのめすか」は、章題の通り解決策です。佐高氏は「安倍的なものがこれだけ日本社会を浸食しているときだからこそ、私たちは社会のそこここに、市民的で非政府的なもの、また新たな公共性を宿した動きを見出して、それを支援していかなければいけない」と指摘、浜教授も「本質的な問題について声を上げる役割は市民の側にある」と応じています。浜教授の結論です。「生産に役立つ者の権利だけを守るのではなくて、労働者にさえもなりえない人々を救済するため、その人たちの人権を守るために、社会保障制度や社会保険制度はさらに確立され続けなければいけない。」「断固としてあらゆる弱者を救済し、本源的な人権を確立すること。そこに我々の意識は向かなければいけない。そもそも、その発想が欠如していたからこそ、その隙を狙ってアホノミクスやトランプ現象が出現してくるわけです。そこを見据えなければ、チームアホノミクスを本当に叩きのめすことはできないと思っています。」「アホノミクス的な人権侵害を蹴散らかしていくには、あらゆる弱者を包摂する、あらゆる闘争の集約が必要なのだと思います。」
 勇気が湧いてくる徹底討論が楽しめる一冊です。

【書籍情報】
2016年12月に講談社より発行(講談社+α新書)。著者は佐高信氏、浜矩子・同志社大学大学院教授。定価は840円+税。

【関連書籍・論文】
浜矩子『さらばアホノミクス—危機の真相』(毎日新聞出版)





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