法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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書籍『六訂 憲法入門』

M.I

 憲法学の権威、樋口陽一東北大学・東京大学名誉教授の最新刊です。1993年に初版が出て、今回は六訂版ですから、息の長いロングセラーと言えるでしょう。21世紀の今、改めて立憲主義の意義を現実に問わねばならぬ時代となったことは、昨今の集団的自衛権や安保法制をめぐる問題で明らかです。
 本改訂もこれらの時代状況の展開に応じるものとなっています。しかし、初版以来の「個人の尊重という価値を大前提としたうえで、権力からの自由を近代憲法の核心としてとらえ、それと抵触するものを否定するというかぎりでの反・集団主義の見地が、基本的な立脚点」という樋口憲法学の視点は健在です。
 憲法入門の書名に恥じず、各章では順に、憲法とは何かという本質論、日本国憲法の基本原理たる国民主権・平和主義・基本的人権についての概論、個人の尊厳を立脚点とする人権各論、立法・行政・司法にかかわる問題、さらに最近の改憲動向までがコンパクトにまとめられています。もちろんコンパクトとはいえ、内容は深く、例えば「なぜ『平和のうちに生存する権利』なのか」と題した章では、憲法九条の解釈について、戦後すぐの自衛権まで否定した吉田茂首相の答弁に始まり、2014年の集団的自衛権の行使を可能とする閣議決定、「専守防衛」の歯止めを政府自らが取り外した安保法制の成立まで、もれなく論じています。そして現在の事態に対して、「実際、第九条があるのに、その意義を積極的に世界に訴えかけ、その理念にふさわしい国際貢献のあり方を創出するという努力を怠ってきたことこそが、反省されるべきであろう」という実に厳しい指摘があります。
 核心を衝く指摘は著者ならではのものでは、例えば人権に関する章で、「人権論の基本とは、法人でなく自然人、多数者でなく少数者、社会通念でなくそれへの非同調者、つまるところ『かけがえのない個人』こそ人権主体なのだ、ということである」と、感動的です。平等に関しても「その際、いちばん重要なことは、個人ひとりひとりが多様であることによってかけがえのない価値を持つのだ、という視点である。『みんな同じ』だから平等、というのではなく、みんながそれぞれ違うからこそ平等、という見方である。これこそ…人権の問題すべてに共通する最大の核心にほかならない」と、こちらも読ませます。
 著者の結論です。「日本国憲法は、日本社会にとっての人権宣言にほかならない。『人類普遍』というに値する人権という価値原理を土着化させることができるかどうかは、まず日本自身にとって、大きな課題でありつづけている。同時にまたそれは、『人類普遍』とはいいながら西洋近代社会の外にまで及んでいなかった近代憲法原理を、本当に普遍的なものにさせるためのチャレンジとして、世界にとって大きな意味を持つものでもある。」
 本書では、社会の文明のあり方を支えるものとしての憲法という視点から、日本国憲法を、人類社会の大きなタテ糸(歴史)とヨコ糸(比較)の交差のなかに位置づけ、「憲法から見た現代日本社会論」が論じられています。法学部の専門科目ではなく、教養としての憲法を学ぼうとする読者に広く読まれるべき一冊と言えます。

【書籍情報】
2017年2月に勁草書房から発行。著者は樋口陽一東北大学・東京大学名誉教授。定価は1800円+税。

【関連書籍・論文】
樋口陽一・小林節『「憲法改正」の真実』(集英社新書)
樋口陽一『個人と国家—今なぜ立憲主義か』(集英社新書)







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