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特集『「学び」への権力的統制を許すな』

M.I

 昨今、「学びの世界」の危機的状況が次々と明らかになっています。いわゆる「森友学園」「加計学園」の問題にしても、これらは@戦前回帰型教育の唱揚によって「立憲主義」に、A政治・行政の私物化と行政決定プロセスの歪曲とによって「法治主義」に、B国会と行政部内での真相の究明への政府・与党の消極的姿勢、端的にはその妨害によって「民主主義」に背馳するという意味で憲法の根幹に関わる問題になっています。本特集は、「学び」の今日的窮状とその克服・打開の展望を探る論稿から成り立っています。

 三輪定宣千葉大学名誉教授は「大学の自治と大学財政—その危機と展望—」において、安倍政権が図る大学財政の効率的・差別的・統制的運用の強化が、大学財政の衰退・逸脱を加速し、大学の危機を増幅することは必至であると指摘します。三輪教授は、安倍政権の大学政策では「大学のガバナンス」改革(学長の権限強化が中心)が強要され、その誘導・統制手段として科学技術政策・防衛政策にリンクした大学財政が活用されていると述べます。その結果、国立大学の運営交付金や私立大学補助金は国策遂行の誘導手段となり、国策追随に応じて「メリハリのある予算配分」が行われています。これは大学財政による露骨な大学自治、学問の自由への統制であると解説します。また、国家安全保障戦略、日米協力指針に基づく防衛予算増加、防衛装備・技術協力、デュアル・ユース(軍民両用)、産官学結集のための大学等への研究委託が急拡大しています。
 三輪教授の提言です。「安倍政権の『教育再生』という『戦後教育』、その要の大学自治への総攻撃に対し、個人や団体が幅広く連帯・共同して反撃する臨戦態勢、大学共同戦線の構築が焦眉の課題となっている。」
 晴山一穂専修大学教授は「文科省『天下り』問題と大学の自治・自律」で、最近話題となった文部官僚の早稲田大学への天下りの問題から論を始めます。晴山教授の危機意識は深刻です。「文科省職員(とくにキャリア官僚)の大学への再就職(天下り)は、大学と文科省の癒着を促進させ、全大学に対して中立・公正に行われるべき大学行政を大きく歪曲すると同時に、大学への国家統制の強化と大学の自治・学問の自由の破壊をもたらすことになりかねず、ひいては、高等教育への国民の要求に応えると同時に真理の探究を使命とする大学の存在意義そのものを危うくするものといわなければならない。」

 成嶋隆獨協大学教授は「『道徳』教育の諸問題—『教育勅語』から読み解く」で、2017年3月末には森友学園の教育勅語問題と道徳教科化の動きとが合流したと指摘します。安倍内閣は、かつて1948年の衆参両院において排除ないし失効確認の決議がされていた教育勅語を閣議決定において復権させました。
そして「特別の教科」とされた道徳が2018年度からの実施に向け、2017年4月に初めての道徳教科書の検定結果が公表されるに至ったのです。戦前日本の公教育法制は、教育勅語に盛り込まれた忠君愛国の天皇制道徳を、筆頭科目である修身科などをとおして国民(臣民)に注入することにより「皇国民」を錬成するという機能を営む公教育のレジームでした。1947年、教育基本法が制定され、教育勅語に替わる新憲法に基づく教育目的・理念が明らかになりました。
 成嶋教授は、現在進行する道徳教育は、教育勅語体制に酷似すると述べます。そして「そもそも公教育が、道徳という諸個人の内心的判断に委ねられるべき領域に踏み込むべきか否かという原理的な問いに行き着く」と根源にまで迫ります。そして日本国憲法19条の思想・良心の自由(内心の自由)の保障は、客観的憲法原則として「国家の価値中立性」を要請していると述べます。そこで結論です。「道徳の『教科化』が、国家による道徳規範の公認を前提とする限り、それが国家の価値中立性原則に違背し、憲法一九条に抵触することは明らかである。」

 青沼裕之武蔵野美術大学教授は「安倍内閣のスポーツ政策の批判的検討—『第2期スポーツ基本計画』を中心にして—」で、「新たな有望成長市場の創出」として「スポーツの成長産業化」が位置づけられ、「スポーツは官民が一体となって進める経済成長政策の一角を占めることとなった」と指摘します。しかし、「『一億総スポーツ社会』を実現するとの気高い呼びかけはあるが、現実はそれとはほど遠い状況にあるにもかかわらず、その分析はなく、手立ても見えてこないという問題がある。」「総じて、安倍内閣のスポーツ政策のねらいは、スポーツを自由市場に組み込み、利潤追求の手段として利用することにある。」青沼教授の重大な指摘です。「文科省とスポーツ庁は、東京オリンピック・パラリンピック開催支援には積極的であっても、地域スポーツ振興については責任を果たすだけの財源確保ができず、見通しがもてない状況にある。」
 岩本努日本教育史学会会員は「大学生の近現代認識」で、近現代史に全く疎い大学生の現状を明らかにします。例えば「鬼畜米英」という言葉も大学生の7割以上が意味がわからないという驚きの結果が出ています。大学生の近現代史の知識も認識も希薄なものと言わざるを得ない現状から、興味深い指摘がなされます。「自民党の三原じゅん子議員の『日本が建国以来、大切にしてきた価値観、八紘一宇』という発言や、本年の森友学園問題を契機とした教育勅語論争、教育勅語の教材使用を否定しないという閣議決定も、国民の近現代史認識の底の浅さをついて出てきたのではないか。」
 岡村稔日本学生支援機構労働組合書記長は「『学び』を支える奨学金制度のこれから」で、ようやく誕生した返還の必要のない給付奨学金制度について解説します。

【書籍情報】
日本民主法律家協会が発行する雑誌『法と民主主義』2017年6月号の特集。定価は1000円+税。

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