法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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書籍『伊藤真の日本一やさしい「憲法」の授業』

M.I

 18歳からの選挙権が実現した現在、早くから主権者としての憲法教育がますます重要になっています。本書は、法学館憲法研究所の伊藤真所長が、21世紀を生きる若者たちに日本国憲法の基本理念を語っています。伊藤所長は問いかけます。「世界中の一人ひとりの個人を尊重する、そんな生き方をあなたはできますか。」
 第1章「『憲法』って何だろう?」では、立憲主義を学びます。「立憲主義は『国民の自由・権利を保障すること』を第一の目的として、権力者を拘束する原理です。」ここで立憲的意味の憲法の内容と特徴が解説されます。
 第2章「憲法の歴史を知っておこう」では、ギリシャ・ローマ時代に生まれた憲法の原型、ジョン・ロックの社会契約説、そしてフランス革命を学びます。手放しの市民革命礼讃になっていない点は重要です。「身分制の崩壊や個人の尊重といいつつも、それはあくまでもブルジョアジーのためのものであり、決して真の意味で人類普遍のものではありませんでした。一七八九年の人権宣言で予定されていた『人』も男性に限定されていましたし、西欧キリスト教社会に属さない者は、同じ人として扱われませんでした。そのことは、後の西ヨーロッパ諸国の植民地政策やアメリカの先住民に対しての仕打ち、奴隷制などを見ても明らかですし、今でも西ヨーロッパには階級(class)意識が根強く残っています。」次に、ポツダム宣言の受諾から始まる日本国憲法の成立史が解説されます。
 第3章「憲法の基本原理を押さえよう」では、小学校の社会科で必ず習う憲法の三大原理が語られます。そして、「日本国憲法のもっとも重要な規定はどこか」と聞かれれば、個人の尊重を定める13条こそが真っ先に挙げられるべきものであることが強調されます。ここで人権保障も民主主義も平和主義もすべて「個人の尊重」から導かれることが明らかになります。次に個人の尊重と並ぶ憲法の基本原理である「法の支配」が解説されます。
 第4章「憲法の基本、『平和主義』について知っておこう」では、憲法9条について詳しく解説されます。ここで自衛隊の存在が問題になります。伊藤所長は「子どもの目から見ても、日本の自衛隊は軍隊であり『戦力』であることは明らかです。したがって、自衛隊が憲法違反であることは否定できないと思います」と明解です。「憲法はたとえ自衛のためであっても戦争は予定していないと解釈するのが自然でしょう。」「たとえ人道的な目的であっても、武力によって解決することなど決してできないというのが憲法の考え方といえるのです。」
 2014年7月1日、安倍内閣は、集団的自衛権の行使容認を閣議決定しました。伊藤所長は「安倍内閣の閣議決定は、憲法が主張する平和主義に反するだけでなく、立憲主義の理念に反し、ひいては個人の尊重を踏みにじるものといわざるをえません」と痛烈です。15年には一連の安保法が成立します。「日本国憲法は、軍隊(自衛隊)で国を守ろうとするのではなく、外国から攻められないようにする賢明な外交政策によって日本国民の安全を保持することを要求しています。安保法制はどこから見ても、こうした憲法の要求する理想に反するものといわざるをえません。平和主義、立憲主義に反し、個人の尊厳を著しく侵害するものなのです。そのため安保法制に対しては、これを違憲であるとして全国で訴訟が提起され、今後も増えていく予定です。」
 第5章は「人権」です。ここでは『爆弾の作り方』という本に政府が出版禁止の命令が出せるのか、カルト宗教の信者の転入届を市役所が拒めるのか等の具体的事例で人権の本質を解説します。ここで多数派の抑圧から少数派を解放するために機能してきたのが人権だとわかります。伊藤所長の提言です。「他の人がやるようにやれとか、みんなが言うとおりにするのが正しいことだ、などという考え方は、もうやめるべきでしょう。少なくとも個人の尊重の理念からは、このような考え方は出てきません。一人ひとりの個性を互いに尊重し合い、多様な人々の共生をめざすことこそが憲法の考え方であるといえます。」同調圧力の強い日本社会ですが、若者のあるべき生き方でしょう。
 第6章は「統治機構」です。権力分立の原理から、国会、内閣、裁判所、地方自治が多くの図解と共に解説されます。最後は「憲法改正」です。2012年、自民党の決定した「日本国憲法改正草案」について触れています。「この草案は一言でいえば、人権の保障度を下げ、多くの義務規定を設けることで、立憲主義と決別している点がもっとも注目すべき特徴です。」更に昨今しばしば話題になる緊急事態条項です。「緊急事態条項は、非常事態への対処を理由として、憲法による規律および国会のコントロールを逃れ、権力を内閣に集中させ、人権制限を容易にするものであり、近代憲法の骨格ともいえる立憲主義、権力分立の原理、人権保障を骨抜きにしかねないものといえます。」

【書籍情報】
2017年4月にKADOKAWAから発行。著者は伊藤真伊藤塾塾長・法学館憲法研究所所長。定価は1400円+税。

【関連書籍・論文】
斎藤一久編著『高校生のための憲法入門』(三省堂)
上田勝美監修『13歳からの日本国憲法』(かもがわ出版)




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