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書籍『私たちは戦争を許さない―安保法制の憲法違反を訴える』

M.I

 2015年9月19日未明、安倍政権は採決の強行によって、新安保法制を成立させる歴史的暴挙を犯しました。2016年4月26日、東京で安保法制違憲訴訟が提訴されました。この違憲訴訟は、2017年6月末現在、東京、福島、高知、長崎、大阪、岡山、埼玉、長野、神奈川、広島、福岡、京都、山口、大分、札幌、群馬、宮崎、釧路、鹿児島、沖縄(提訴順)の20の地方裁判所で23件の訴訟が提起されており、今後も全国各地での提訴が準備されています。原告は6296人、代理人弁護士は1614人に及んでいます。
 安保法制違憲訴訟の会・共同代表の寺井一弘弁護士と同じく共同代表の伊藤真法学館憲法研究所所長は、本書の前書きで、この違憲訴訟の意義を現在各地で広がっている秘密保護法、安保法制、共謀罪など政権の暴挙を許さない闘いと連帯して「わが国の立憲主義と民主主義を取り戻すための松明である」と位置づけています。さらに「国の政策を唯々諾々と追認することが度々ある司法のあり方を根底から問い、三権分立の一角を担い、かつ憲法保障の役割を担うべき裁判所に、その職責を果たしてもらう必要があると考えています。」
 本書では、「安保法制 いま何が起きているのか」、「戦争体験と平和への祈り」、「脅かされる平和と市民生活」、「私たちは訴え続ける」4章立てで、年齢、経歴、環境の異なる49名の原告の声が収録されています。「本書に現れている原告一人一人の声は、政権への怒りの声であり、告発の声であると同時に、自らの自由な生き方と憲法を不断の努力によって保持したいと決意した国民・市民の強い意志の表れなのです。」
 原告の方々は、安保法制によって今、引き起こされている被害であることを読者に訴えかけています。以下、原告の方々の声を一部引用させていただきます。
 「長崎に原爆が落とされたとき、私は九歳でした。…八月九日のことはよく覚えています。…歩いてくる人たちは、まともに生きていた人は一人もいませんでした。」「二○一五年九月の安保法制の国会成立が強行されたのを目のあたりにし、こんな法律を作った政治家たちは口では平和を言いながら、戦争のことは何も分かっていません。一瞬にして一五万人もの死傷者を出した長崎原爆の恐怖を、私は今でも忘れることはできません。私たちを苦しめ続けた戦争と核兵器の被害は、長崎を最後にしてほしいと思います。」(被爆者・牟田満子)
 「一九八○年に始まったイラン・イラク戦争の際には、私は原油を輸送するタンカーの一等航海士として、ペルシャ湾を何度も航海しておりました。」「日本船は、ペルシャ湾に入るときには、日の丸を大きく掲げることで、日本船であることをイラン・イラク両国に分かるようにする方法をとり、…このおかげで、海外の船舶は攻撃されたものもありましたが、日本船は一隻も攻撃されることはありませんでした。」「これは、憲法九条のもつ、はっきりとした効果であったといえます。」「集団的自衛権の行使容認を政府が決めてから、日本の船舶が安全ということはまったくなくなりました。」(元船員・本望隆司)
 「昭和二○(一九四五)年三月一○日の東京大空襲は、二時間あまりの間に東京下町の約一○万人が焼き殺され、約一○○万人が罹災したというすさまじい戦争被害でした。私は、母親と二歳、三歳の幼い弟を焼夷弾の火災の中で、失いました。母や小さな弟たちが、火あぶりの刑に処せられるような何をしたというのでしょうか。」「私はこども心に『何故、大人たちは戦争を止められなかったのか』と思いました。今も問い続けています。そして今、大人である私たちは、それを問われています。」(戦争体験者・河合節子)
 「日本国民はかくあるべしと、日本国という名の国家が、具体的には安倍政権が、規定し、この規定に従えない、あるいは同調できない者を、異分子すなわち非国民として、国家が、実質的には安倍政権が、排除する、といった状況が、安保法制の施行によって、杞憂ではなくなっているのです。」(作家・彦坂諦)
 「私は、一六歳で、五感をもって『あの日』のピカ・ドンを知ることになりました。非人道的な破壊と殺りくだけを目的とした原爆の本当の悲惨さを知る者の一人です。」「二○一五年の九月十九日に、集団的自衛権の行使を認める安保関連法が強行採決され、二○一六年三月二九日に施行されました。何のために広島・長崎の悲惨な被害を受けたのでしょうか。…わが国の政府は過去の反省が足りず、過ちを繰り返すのではないかと心配でなりません。原爆の悲惨な情景が思い起こされ、胸が苦しくなります。」(被爆者・服部道子)
 本書の最後に、青井未帆学習院大学大学院教授が解説を書いています。「九条が守ろうとしているのは、自由や私たち市民の普通の生活です。憲法の言葉を使えば、『生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利』(憲法十三条)の基礎を確保することでしょう。日本国憲法は、軍権力がコントロール不能になって自由が現実に侵害されてからでは手遅れになってしまうからこそ、仕組みとして九条を設けたのです。だから、このような予防的な仕組みにとっては、その目的である自由や市民の生活が危険に晒される『おそれ』に敏感であることが、本質的に要求されるのです。」

安保法制違憲訴訟の会

【書籍情報】
2017年8月に、岩波書店から発行。編者は、安保法制違憲訴訟の会。定価1300円+税。

【関連書籍・論文】
安保法制違憲訴訟の会『安保法制違憲訴訟―憲法を取り戻すために』(かもがわ出版)




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