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特集『LGBTと法』

M.I

 最近マスコミなどで大きく取り上げられることが多くなったLGBTの法的問題を、多方面から論じた特集です。総論に続き、実態編の論文が7本、理論編の論文が5本の大特集ですが、何と言っても現場の第一線で活躍する弁護士の書いた実態編に読み応えがあります。
 LGBTという言葉は、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーを指していますが、総論を書いた綾部六郎名古屋短期大学助教によると、最近ではLGBTに包摂されえない性的マイノリティへも配慮した「SOGI(ソジ)」という性志向・性自認を意味する言葉が、国際機関などにおいても用いられるようになってきたとのことです。
 さて各論です。やはり大変なのは教育現場です。中山重徳・横山佳枝・熊澤美帆の三弁護士による「LGBTと子ども — 教育現場における問題点」を読むと、若年層LGBTの直面する困難が胸を打ちます。若年層LGBTの大半は、義務教育期間中には自らの性自認や性的指向を自覚するそうですが、1クラスに1〜2名いると言われるLGBTの「子どもを取りまく周囲の大人(親・教師)の知識・理解が未だ不足しており、信頼する大人に相談することすら難しい」状況です。「友達、親や教員、さらには自分自身もが社会の異性愛規範、性別規範を内面化し、性教育があっても異性愛が前提とされる結果、若年層LGBTは、自己肯定に困難を有し、その性自認や性的指向が原因となって他の生徒からのいじめに遭うことも多い。自殺未遂リスクの高さも指摘されている」という悲惨さです。
 三輪晃義弁護士の「同性婚と人権保障」では、「日本においては、同性カップルは法的に『存在しないもの』として扱われている」現状を明らかにします。三輪弁護士は同性婚ができないことによって当事者が被る不利益に、相続人となることができない、医療現場で家族として扱われないなどを指摘します。そして人権保障の観点から、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」とする憲法24条、憲法13条(個人の尊重)と自己決定権、憲法14条(平等原則)、憲法24条2項(個人の尊厳と両性の本質的平等)などを根拠に同性婚の権利を導き出します。三輪弁護士の指摘です。「同性婚の問題は、同性カップルが考えるべき問題ではなく、同性カップルを取り巻く社会の側が考えるべき問題なのである。」

 立石結夏弁護士は「セクシャルマイノリティと暴力」で、「セクシャルマイノリティ(性的少数者)が、さまざまな暴力被害に遭い、また、被害に晒されやすい状況にあることは、一般にあまり知られていない」事実を明らかにし、支援体制の不十分さを指摘します。
 田中太郎弁護士の「アメリカはなぜ同性婚を実現できたのか」では、2015年6月26日、連邦最高裁判所が、同性婚を否定することは、修正14条のデュー・プロセス条項および平等権に違反するとの判決を出すまでの歴史を語ります。一見、性的マイノリティをめぐる権利運動の先進国とも思えるアメリカですが、実のところ2003年に連邦最高裁において違憲判決が下されるまでは同性間の性交渉が違法行為だとされていた国でした。
 清水皓貴・鈴木朋絵両弁護士による「トランスジェンダーをめぐる法的問題」は、労働関係や刑事収容施設でのトランスジェンダーの不利益取扱いや不当な処遇を明らかにします。
 山下敏雅・服部咲両弁護士による「LGBTと子の繋がり」は、同性カップル以上に法的整備の取組みが遅れ、未着手のままとなっているLGBTと子どもの繋がりについての考察です。日本ではすでに多くのLGBTが子育てを行っています。両弁護士の指摘です。「子どもをもちたい、家族を築きたいという思いは、決してエゴではなく、人間としてまったく自然なものであり、そして社会にとっても重要なことである。私たちは皆、誰かに育てられて今がある。」

 研究機関「電通ダイバーシティ・ラボ」(東京都)の約7万人を対象にした2015年のインターネット調査によると、LGBTを含む性的少数者の割合は人口比7.6%で、この数字は「13人に1人が性的少数者」を意味します(9月22日毎日新聞)。私たちが普段気づいていないLGBTについて考える良い機会となる好特集です。

【書籍情報】
日本評論社が発行する雑誌『法学セミナー』2017年10月号の特集。定価は1400円+税。

【関連書籍・論文】
別冊法学セミナー『憲法のこれから』(日本評論社)




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