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書籍『心さわぐ憲法9条—護憲派が問われている』

S.K

 護憲派の一市民として悩ましい問題に正面から向き合った1冊です。
 著者は、安倍政権下での九条改憲を阻むためには、市民自身が専門家の主張を咀嚼した上で、「心さわぐ」すべての人に届く問題意識や話法を見出していくことが重要であるとの意識から、多くの参考文献を紹介しつつ、きわめて実践的な方法を提案しています。「心さわぐ」とは、胸騒ぎがする、不安を感じるという意味です。著者は、九条に自衛隊を明記する案に「心さわぐ」人たちと現在の九条に対して「心さわぐ」ひとたちの「心つなぐ」運動を模索します。
 著者は、憲法九条が人類の英知の結晶であることを強調する立場ではなく、九条の理想が世界の現実を変えることに楽観的ではありません。また、本書では安保条約・沖縄・天皇制などの問題を考えなければ、九条や平和主義を理解できないことから、憲法だけでなく、戦後日本の体制を見直しています。
 まず第1章では、護憲派の主張はバラバラで、現代の「キーワード」である立憲主義についても、憲法学会の常識と市民の認識との間にギャップが存在していると指摘します。著者を含め、憲法を生活に活かそうと自らが憲法を守り、憲法の理念を体現しようとしてきた人たちは、憲法を愛してきたという自負ゆえ、憲法学の常識としての立憲主義を受け入れ難いといいます。また日本の戦争への見方なども様々で護憲派は一枚岩になれないと指摘しています。
 第2章では、日本国憲法の制定過程、自衛隊問題、憲法と市民の距離感、護憲派の憲法認識に関して多くの市民の盲点となっている事柄を考察します。
たとえば、九条の平和主義と一条の象徴天皇制が関連し合っており、九条の背景には米軍の軍事要塞としての沖縄の存在が不可分であったこと。いま自衛隊の災害救助活動を市民の圧倒的多数が支持していることに関しても、1977年の米軍機墜落事故や御巣鷹山の日航機墜落事故における自衛隊の対応を挙げ、自衛隊という組織の重大機密を市民が知ることはまったく不可能であることなどの指摘をしています。
 第3章では、平和主義が厳しく問われている4テーマ(自衛隊問題、南スーダン問題、沖縄、北朝鮮問題)について、現場の声に耳を澄ませ、九条を守っていれば日本は平和だという主張を批判的に検討し、平和主義の深化と九条を守る運動の現在を見つめなおしています。
 第4章では、九条論を豊かにするきっかけとして、九条削除論を展開する井上達夫氏や左派的改憲を提起した加藤典洋氏の主張にも傾聴すべき点があると紹介しています。また、護憲派側からの平和構想として、水島朝穂氏、渡辺治氏の主張も紹介しています。
 第5章、第6章では、九条に不安を感じる人とどう語り合えるのか。改憲構想にいかなる視点で対決していくかを考察し、実践的な方法を提案しています。
 政権がいま進めるべきは非正規雇用問題や子供の貧困対策などの経済政策や社会保障の充実であること、改憲などで社会に亀裂を生じさせるべきではないことなどを訴え、国会での改憲発議をさせないのが大目標であるが、たとえ九条賛成派から自衛隊明記賛成派が出てもあわてず、自らの話法を磨き丁寧な討論で誤解を解く努力をし、緩やかな団結を失わないことが肝要であるといいます。生身の人間をイメージし、自己を相手の立場に見立てて語ることの大切さや、1分で改憲を批判する例文を紹介するなど、話法を磨く具体的な方法を提案しています。
 エピローグでは、憲法を踏みにじる政権がなぜ続いてきたのか安倍政権を再考し、6つの要因を挙げています。たとえ最高権力者である首相に対しても批判と監視を踏まえた上で人間的な関心を持ち続けていくことが重要であると述べています。

【書籍情報】

2017年12月に花伝社から発行。著者は大塚茂樹(ノンフィクション作家)。定価は1500円+税。

【関連書籍・論文・HP】
水島朝穂『ライブ講義 徹底分析!集団的自衛権』(岩波書店)
水島朝穂『平和の憲法政策論』(日本評論社)
水島朝穂「平和憲法へのメッセージ」(HP)





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