法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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書籍『合格水準 教職のための憲法』

S.K

 本書は、教職を志望する学生や、現在教職にある方々向けに書かれた本ですが、主権者である私たちが、真の民主主義を実現していくために必要な、憲法の基礎知識や考え方を身につけるのに適した内容となっています。
 たとえば、参政権と国務請求権の章では、「現在ある法律の廃止や改正を求めたいとき、主権者である私たちにはどんなルートがあるだろうか。現在大まかにいって次の5つの方法がある」として「参政権」「請願権」「パブリックコメントへの投稿」「市民運動」「裁判」を挙げて解説しています。民意が正しく反映されない選挙が繰り返され、違憲な法律が次々に成立し、改憲の国民投票が迫る中、きわめて実践的な内容です。
 また、本書では憲法理論を掘り下げることはしていませんが、各章にはコラムがあり、主権者として知っておきたい現在の憲法課題が鋭い切り口で語られています。どれも興味深い内容です。たとえば、「日本における『主権の転換』とポツダム宣言」というコラムでは、編著者の志田陽子氏が、新憲法採択に際しては、民主主義の手続きとして正当な審議、修正、決議が行われていたことを指摘した上で、押しつけというなら「フランス政府にとってのフランス革命」、「アメリカ南部にとっての奴隷制廃止と人種平等」、「1990年台の南アフリカのアパルトヘイト廃止と人種平等」も押しつけといえる。仮に日本国憲法成立過程を「押しつけ」と呼ぶならば、「押しつけられたのは9条(武力放棄)の条項ではなく、国民主権・民主主義だったということになるのだが、私たちは、この原理を「押しつけられたものだから要らない」といえるだろうか。」と述べています。
 1章では、国民主権、民主主義、立憲主義、象徴天皇制という憲法の基本的システムが解説されています。平易で簡潔な表現でありながらポイントを押さえた理由づけがなされており憲法の骨格がくっきりと浮かび上がります。
 2章では、学校教育で最も重要となる「主権者教育」に直接関わる参政権と国務請求権を取り上げています。ここでは、民主主義のサイクルを支える権利として参政権や国務請求権が説明されています。
 3章の表現の自由では、ヘイトスピーチについても丁寧に解説されており、「日本の場合、まず警察がマイノリティの被害の訴えに対して誠実に対応すること、民事救済(差止め命令や損害賠償命令)を弾力的に使えるように、ヘイトスピーチ被害に関する人格権侵害の裁判理論を確立・共有することが必要」であること、ヘイトスピーチ解消法が2016年に制定・施行されたが、被害が収まらない場合には言論への規制に道を開くことになるのかもしれないことなども述べられています。
 5章の人身の自由と適正手続では、教育現場で、仮に非行を行った生徒がいるとしても、「その生徒も正当な扱いを受ける権利があることを忘れて、激しい口調で糾弾して無理に罪を認めさせたり謝罪を強制したりすることは人権侵害となる」ことや、「学校現場での問題解決プロセスにも憲法の知識・知恵が生かされることを願う」とも述べられています。
 6章の経済的自由では、教育職員の「職業選択の自由」への規制や、児童生徒の就労や消費者保護についても触れられているのが特徴的です。また、授業で著作物を扱う機会も多い教員には、自身のためにも生徒指導のためにも知的財産についての法的知識が重要であることから、知的財産権については7章で厚く解説されています。9章の教育を受ける権利と児童の権利では、教科書問題や教員の政治的中立の問題、いじめ問題なども解説されています。
 15章の安全保障と平和主義では、日本国憲法誕生の意味、9条の意味、冷戦・自衛隊・日米安全保障、21世紀に残された課題、自衛隊の福祉型危険任務について、米軍基地問題、新世代兵器、「集団的自衛権」問題、自衛の意味、国際社会への責任など、多面的な検討がなされ、わかりやすく解説されています。
 教職に関わる人のみならず、多くの人にお薦めしたい1冊です。

【書籍情報】
2017年11月に法律文化社より発行。編著者は志田陽子・武蔵野美術大学造形学部教授。定価は2,500円+税。

【関連書籍】
書籍『表現者のための憲法入門』(志田陽子著)
書籍『映画で学ぶ憲法』(志田陽子編)

<法学館憲法研究所事務局から>

この書籍の編著者の志田陽子さんは以前当サイトでシネマDE憲法にもご寄稿いただいています。
映画『アメイジング・グレイス Amazing Grace』
映画『ミシシッピー・バーニング(Mississippi Burning)』
映画『大統領の執事の涙 The Butler』
映画『アミスタッド Amistad』
映画『MAX アドルフの画集』





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