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論文『核時代の法ニヒリズムに挑戦する 朝鮮半島核問題の解決めざして』

S.K

 2017年7月核兵器禁止条約が採択され、「核兵器のない世界」に向けた大きな一歩が踏み出された。しかし核兵器保有国やそれに依存する日本政府の抵抗は強く、北朝鮮は核実験とミサイル発射を続けている。本論文は、条約の発効を求める運動が進められる中、核時代の法ニヒリズムに挑戦し、朝鮮半島核問題の解決の方策を探る。
 核時代の法ニヒリズムとは、核兵器と原発に象徴される科学技術文明が世界を支配する「核時代」における核至上主義のイデオロギーに付随する核兵器の合法性を提唱する神話のことであり、一言でいえば、「核兵器は法を黙らせる」ということだ。
 著者の浦田氏は、この神話に対してヒロシマ・ナガサキの事実に直接向き合うことが必要であると指摘する。つまり、広島と長崎への原爆投下は、当時米国政府によって全面的に受諾されていた国際刑事法の基本原則に対する、明白かつはなはだしい違反であり、国際犯罪だったのではないか。「この認識を研ぎ澄まして、原爆使用の道義的責任に留まらず、法的責任を追及することが、法律家必須の社会的責任ではなかろうか。」と述べている。
 法ニヒリズムは、1939年から1947年に及んだマンハッタン計画によって米国国内法に浸透し、軍事秘密主義のベールの中で安全保障のコングロマリットが形成され、原子爆弾使用は戦後の対ソ世界戦略を見据えて決断されたものであり、「帝国日本はその目標に選ばれ、ヒバクシャは生贄とされた。」のであるから、「「加爆国」米国によるその謝罪と償いは、人類の文明を蘇生させ人間の尊厳を回復するうえで必須ではなかろうか。」ということである。また、ソ連の核開発も極秘裏になされ、米国の核独占を妨害することになったが、ここでも核兵器が法を黙らせてきたという。
 現在の朝鮮半島核問題を理解し、解決の糸口を探る上で歴史を振り返ることは不可欠である。本論文では、「明治維新150年」の中で朝鮮戦争とはなんだったのかを法的に検証し、朝鮮半島情勢の変遷や現在の問題の元凶を明らかにしている。そして、主体思想や先軍主義、核実験やミサイル開発の経緯、それに対する国際社会の対応、1993年から1994年の一即触発の北朝鮮危機(I)についての「米朝枠組み合意」とその破綻に至る経緯、2002年から現在まで続いている朝鮮核危機(II)などが解説され、朝鮮半島核問題の本質が明らかにされている。
 浦田氏は、朝鮮半島核問題解決のためには、朝鮮への制裁を強め、韓国と日本のミサイル防衛を強化するのではなく、「戦争によらない経済・政治外交による解決方向こそ、正しい選択となる。これまでになかったのは真っ当な外交であり、従来の外交は北朝鮮レジームとは両立しないのではないか。」と指摘する。そして、紛争解決の目標からして、まずもって達成すべきは(1)1953年休戦協定に替えて平和協定を作ることを交渉の優先課題とすること、(2)米国・日本・北朝鮮に大使館をおき、外交関係を正常化すること、(3)朝鮮半島の非核化を交渉の前提条件にすることであり、力による関与ではなく、前提条件なしの対話によって、北朝鮮の核実験・ミサイル発射の凍結と米韓合同軍事演習の凍結へと移行し、さらに平和的構造転換まで進めることを展望するとも述べている。

【論文情報】この論文は、「法と民主主義」第525号(2018年1月)に収載されています。筆者は浦田賢治(早稲田大学名誉教授・国際反核法律家協会副会長)。

 




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