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書籍『あたらしい表現活動と法』

S.K

 昨今、表現活動は、そのジャンル・受け手への伝達手段・発信主体のすべてにおいて多様な広がりをみせており、表現活動に関わる法領域は多岐にわたります。本書は、武蔵野美術大学造形学部通信教育課程の「著作権法」の教科書として編纂されたものですが、表現活動に関わる法が広く扱われており、表現者が知っておくべき法的ルールや議論になっている社会問題が解説されています。
 インターネット社会の発達によって、今や国民のほとんどが表現者といっても過言ではない状況です。本書では、インターネット上で名誉棄損やプライバシー侵害を受け、止めさせたい場合に誰にどのような手段で請求できるかや、全く知らないところで自分に関する様々な情報がデータベース化され勝手に利用される危険に関し、どのような法律によって保護されているかなど、身近な問題からわかりやすく解説されています。
 本書で表現活動の法的ルールの概要や規制のあり方を知ることで、より自由な表現活動が可能となると思われます。作家、デザイナー、学芸員、教員、ジャーナリストといった専門職をめざしている人はもちろん、何らかの形で表現に関わる多くの人にお薦めの1冊です。
 第1章では、憲法21条で保障されている「表現の自由」について、憲法で保障されていることの意味やその内容などが、いくつかの事例をあげながら解説されています。
 第2章では、「表現の自由」と衝突する権利が具体的に確認できる場合の制約として、名誉権、プライバシー権、肖像権、パブリシティ権などについて解説されています。
 第3章では、多文化社会における共存と「表現の自由」として、共存のための配慮、社会的マイノリティーへの配慮、児童・青少年への配慮に関する規制が取り上げられています。
 性的表現規制については、現在の判例や多くの学説では、規制手段のありかたを問う思考ステップが抜け落ちていると批判しています。憲法21条1項は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由はこれを保障する。」と定めていますが、現在の判例や多くの学説では、「価値の低い言論」として「表現の自由」の理論から除外された表現があり、その中で「芸術的価値がある」ものに限って規制を免るという判断方法がとられています。しかし、芸術表現は、その本質上、社会規範への挑戦を含む作品が多く、日本のように市場が成熟している社会では、反倫理性を問われるリスクを負いやすいのは、芸術作品の方であり、「保護されない言論」の枠をいったん外した議論が必要ではないかと問題提起がなされています。
 第4章では、産業財産権法、知的財産法の総論、営業上の標識に関わる商標法と不正競争防止法、知的創作物に関わる特許法、意匠法の概要が説明されています。また、商品形態を模倣から守る制度として不正競争防止法のデッドコピー規制が解説されています。
 第5章では、「著作権法」の教科書らしく、著作権法の概要がわかりやすく解説されています。
 第6章の「文化芸術支援と法」では、文化芸術基本法、文化財保護法、美術品の公開促進に関連する法律、さらに博物館・美術館・図書館といった文化芸術を支える施設の運用ルールなどが取り上げられています。
 第7章では、学術的な文章を書くにあたっての法ルールと倫理が実際にレポートや文を書く手順に沿って解説されています。ここでは、レポートの参考資料として「著作権と表現の自由の調整―欧米の状況を参考に」(比良友佳理)「「公の施設」と「集会の自由」」(志田陽子)「わいせつ表現規制と「芸術性」―ろくでなし子事件」(志田陽子)も収載されています。

【書籍情報】
2018年4月に武蔵野美術大学出版局より刊行。著者は志田陽子(武蔵野美術大学 造形学部教授、博士)、比良友佳理(京都教育大学 教育学部講師、博士)。定価は2700円+税。

【関連書籍・論文・HP】
憲法研究者志田陽子オフィシャルサイト
書籍『表現者のための憲法入門』
書籍『合格水準 教職のための憲法』




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