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憲法情報Now<憲法関連書籍・論文>

 

書籍『百歳の遺言 — いのちから「教育」を考える』

H.T

 教育学者の大田堯さん(東大名誉教授)と生命誌研究者・分子生物学の中村桂子さんの対談です。いのちとは、人間とは、教育とは何かという根源的な問いが学際的に深められています。百歳になられた大田さんの「遺言」ですが、異分野の専門家の知見に出逢って研究領域が広がった喜びが行間に溢れています。
 
 大田さんは、明治以降の、上から下の者に「教え」を施し、下の者は上の者に倣うという儒教の影響を色濃く反映した教育観と画一的な教育が現在まで続いていると指摘しています。氏は、人間にとって重要なのは生き物として持っている根源的な内発性であり、教育とはその内発性による学びたいという学習権を支援し、一人ひとりの力を「引き出す」ものだと持論を述べています。「教育」の前提として「学習権」があることを明示した旭川学テ判決に大きな影響を与えた学者として重厚でヴィヴィッドな語り口に引き込まれます。
 82歳の中村さんは、遺伝子決定論を否定し、人間はDNAによる遺伝情報とDNAのはたらき方で変化するものだと話されます。DNAのはたらき方は、身体内外の環境とその人の暮らし方によります。そして、脳だけでなく身体全体が情報の受容体として情報を有機的に処理し、環境の変化に対応して生きることが「学ぶ」ことだと説明されます(自己創出)。大田さんは、中村さんがバクテリアに始まる生命の歴史の延長線上にある人間(ヒト)の「生命の自己創出力」を発見したことは教育の位置を変える大きな転換点だと述べています。

 2人は、第一次安倍内閣による教育基本法の改定とそれに続く現在の教育政策は、一人ひとり違う個性を殺す中央集権的な国家統制の進行であり生きものの多様性という本質に反すると強い危機感を表明しています。
 情報の受容の問題として、スマホなどが一方的に提供してくれる言葉の情報だけに接しがちなこと、及び身体全体でなく脳だけで摂取する傾向が強まっていることは、生きる力と持続可能性を失うことではないかと疑問を呈しています。

【書籍情報】2018年4月に藤原書店より刊行。著者は大田堯氏・中村桂子氏。定価は1.500円+税。

 

<法学館憲法研究所事務局から>

大田堯さんは「今週の一言」にもご登場いただいております。
「一人ひとりがかけがえのない個性と持ち味を伸ばし、出番が求められる社会を」
「映画「かすかな光へ」に携わって」




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