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書籍『子どもの人権をまもるために』

S.K

 本書は、まず編者で憲法学者の木村草太氏が子どもの権利をめぐる法理論と体系の概観を解説しています。そして実際にさまざまな人権侵害や困難を抱えている子どもと接している各分野のアクティビスト16人の論稿によって、さまざまな子どもの人権をめぐる問題が検討され、終章で各氏の論稿を振り返りながら編者が「現場の声と法制度をつなぐために」という視点で総括するという構成になっています。
 どの論稿も、リアルな体験を紹介しつつ、子どもの置かれた困難な現状を明らかにし、説得的な解決策を具体的に提示してくれています。法の理念とあまりにかけ離れた、子どもたちの直面している痛ましい現実の数々に愕然とさせられます。
 本書に取り上げられる重大な人権侵害は、閉鎖的な空間で行われることが多く、子どもたちは被害にあってもなかなか声をあげることができません。権利侵害があまりに一般化していると権利侵害と認識する事自体難しいということもあります。さらに被害にあった子どもたちが保護されても、本音はごく一部の信頼できる大人にしか語られないこともあり、大人に都合の良い解釈がなされ、問題の本質がゆがめられてしまうこともあります。本書は多くの大人が子供たちの現状を正しく理解し、一刻も早く声を上げて変えていくために必読の1冊といえます。
 どの論稿も重要な人権侵害を詳らかにしてくれていますが、ここでは仁藤夢乃氏が論稿で触れている一時保護施設に関する部分を紹介させていただきます。
 仁藤氏は、子どもを守るはずの機関で不適切な対応をされたり、大人に傷つけられたりした経験から、子どもたちにとって「保護」が恐れるものとなっていることがあると指摘しています。家族から虐待を受けるなどした子どもが児童相談所に保護されると、多くの場合、まずは一時保護所に入所し、その間に家庭の状況の調査や子供の生活場所を探すことになりますが、ほとんどの場合、外部との連絡を絶たなければならず、友人や部活の先輩、アルバイト先などに「今から保護されるからしばらく連絡ができません」と連絡することも許されない。授業だけでなく、部活の試合やテスト、文化祭や体育祭、卒業式などの学校行事などにも参加できないといいます。さらに、一時保護所の中では、不可解な禁止事項やルールが存在していることもあり、例えば、私語禁止、鉛筆回し禁止、髪の毛の黒染め強要、お絵かきなどで1日に使える紙の枚数が1人1枚などと決まっていて、紙に番号が書かれている、自傷行為の痕を包帯でぐるぐる巻きにして隠させる、トイレに行くのも許可制で職員がトイレの前までついてくる、歯磨き粉を自分でつけてはならず職員がつける、その他兄弟姉妹であっても会話ができない、保護所内でも一切会わせてもらえない。入所時の荷物検査も厳しく、学校から配布されたプリントやテスト、友人からもらった手紙などプライバシーにかかわるものまで1枚づつ枚数を確認される、脱いだ下着を含む荷物を預かり品の記録として写真撮影されたりもする。居室スペースに行くまでに何重もの鍵つきの扉を進まなければならず、脱走できないようにと窓も開かず、外の空気が吸えない環境の一時保護所もあるといいます。
本書に収載されている論稿は以下。
「虐待──乗り越えるべき四つの困難」 宮田雄吾(大村共立病院・大村椿の森学園)
「貧困──子どもの権利から問う、子どもの貧困」 山野良一(名寄市立大学・専門社会調査士)
「保育──待機児童問題は大きな人権侵害」 駒崎弘樹(認定NPO法人フローレンス代表)
「10代の居場所──「困っている子ども」が安心できる場を」 仁藤夢乃(一般社団法人Colabo代表)
「 障害──障害をもつ子どもへの暴力を防ぐために」 熊谷晋一郎(東京大学・当事者研究)
「離婚・再婚──子どもの権利を保障するために親が考えるべきこと」 大塚玲子(編集者・ライター)
「体育・部活動──リスクとしての教育」 内田良(名古屋大学・教育社会学)
「指導死──学校における最大の人権侵害」 大貫隆志(「指導死」親の会 共同代表)
「不登校──再登校よりも自立の支援を」 大原榮子(「メンタルフレンド東海」世話人代表・名古屋学芸大学)
「道徳教育──「道徳の教科化」がはらむ問題と可能性」 前川喜平(元文部科学省事務次官)
「保健室──学校で唯一評価と無縁の避難所」 白?洋子(佐賀女子短期大学・学校保健)
「学校の全体主義──比較社会学の方法から」 内藤朝雄(明治大学・社会学)
「児童相談所・子どもの代理人──子どもの意見表明権を保障する」 山下敏雅(弁護士)
「里親制度──子どもの最善の利益を考えた運用を」 村田和木(ライター・社会福祉士)
「LGBT──多様な性を誰も教えてくれない」 南和行(弁護士)
「世界の子ども──身体の自由、教育への権利、性と生殖に関する健康」 土井香苗(国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表)

【書籍情報】2018年2月に晶文社より刊行。編者は木村草太。定価は1700円+税

【関連書籍・論文・HP】
   特集『改憲は子どもに何をもたらすか〜児童憲章の再発見〜』
   書籍『憲法という希望』
   書籍『復刻新装版 憲法と君たち』

   当研究所が発信してきた「子どもの人権」に関わる情報




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