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特集『国会を無視する居直り政権  司法の要請に応えない参議院選挙制度改革』

S.K

 参院選の一票の格差を是正するとの建前で自民党が提出した公職選挙法改正案が7月18日、衆院本会議で与党の賛成多数で成立しました。参院定数を比例区で4議席、埼玉選挙区で2議席増やし、比例区に「特定枠」を設けて拘束名簿式を導入するという内容で、「特定枠」は、自民党にとって「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区対象県で擁立されない県の候補者を救済するためと言われています。来年夏の参院選から適用されることになります。
 本稿では、一人一票実現訴訟を通じ一票の格差問題に取り組んできた伊藤真(当研究所所長)が選挙制度の問題を中心に語っています。
 まず、比例代表の枠の中に拘束名簿式を一部導入することについて、より選挙人の意思を反映させる非拘束名簿式と有権者の意思を反映させない拘束名簿式は相いれない内容であり、一部導入は比例代表という制度そのものを壊してしまう。制度の中に矛盾したものを取り込むのであれば、必要性を国民が納得できるように説明しなければならないが、理念やポリシー、制度目的がまるで明らかになっておらず、全く立法趣旨がないと批判しています。本来、国会議員は「全国民の代表」(憲法43条)であって都道府県代表ではないのに、この制度は政党の意思によって都道府県の代表としてほぼ当選が確実な議員を選ぶことになるとも指摘しています。
 また、今回の合区については、2016年参議院通常選挙無効訴訟の最高裁判決を引用し、判決自体も投票価値において0.3票しかない主権者がいることを許すもので大問題だが、今回の合区は3.08倍だった格差を2.985倍にするだけで話にならない。司法の要請に応えていないし、司法から寄せられた国会への信頼も裏切っていると言える、まったくあり得ない「改革」と批判しています。「投票価値の問題については、「一人一票、人口比例が原則」ということを国民がしっかり考え、「3倍未満だとか、3倍未満になればいいじゃないか」という議論自体が、いかにおかしいものなのかを国民が理解し、怒りの声を上げることが大切」と述べています。
 自民党が揚げている憲法47条改憲案については、まさに人口比例選挙を否定するものであり、民主主義や国民主権の理念を後退させるものだと批判。地方自治制度の在り方や参議院の役割といった議論が全くされておらず、地方選出議員数の維持といった党利党略の改憲提案であると批判しています。
 衆議院と参議院の役割分担については、衆議院議員も参議院議員もともに全国民の代表であるべきで、参議院には、6年間の安定した地位の中で、もっと行政監視機能や憲法保障機能を持たせるべきと述べています。
 6つも議席を増やすのはけしからんという議論については、一人当たりの経費を見直し、また、党議拘束をかけないようにするか、少なくともそのような国会運営をすることにより、一人ひとりの議員の考えや行動が国民からみえるようにするのであれば、議員の数を増やすことは十分あり得るが、その前提がないまま、ただ議員を増やすというのでは国民の納得は得られないと述べています。
 また、本稿では今国会を振り返り、今の政権や国会運営の問題点や、主権者である私たち国民、市民がどうしていくべきかなども語られています。
 なお、本特集「国会を無視する居直り政権」には、他に山田厚史氏の「歯止めを失った安倍傲慢路線」、前田哲男氏の「アメリカに屈従した、歯止めなき安倍安保」、上西充子氏の「欺瞞に満ちた「働き方改革」」、三上理氏の「問題だらけのカジノIR法」も収載されており、どれも問題の本質が大変わかりやすく語られています。

【書籍情報】『月刊 マスコミ市民』2018年8月号の特集。著者は伊藤真、聞き手石塚さとし編集委員。定価は630円+税。
       
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