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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

有明訴訟〜よみがえれ有明訴訟

弁護士 馬奈木昭雄さん(福岡県弁護士会)

 海中に次々と落ちていく「ギロチン」で有名な諫早干拓事業工事の差止を求める仮処分と本訴を、2002年12月、佐賀地方裁判所に提訴しました。原告数は現時点で約850名、うち漁民は約200名です(1000人の原告を目指しています)。

 有明海は宝の海でした。「魚が泉のようにわいてくる」という言葉どおり、多種多様の魚介類が豊富でした。しかしその宝の海も、しだいに死んでいきました。現在は、日本有数の産地だったノリも、タイラギも特産のエツも、漁獲は見る影もありません。漁民は生活苦に耐えかね、次々と転業しています。当然漁業に関係した産業も、倒産の危機に瀕しています。

 海は、周辺環境から独立して存在しているのではありません。山から流れ出た水が、川になって谷を下り、平野を潤し、海へ流れ込んでいます。山から海まで、地域全体が一つの自然の体系を構成しているのです。国は政策として、その山を外材の輸入に頼って荒れさせ、荒れた山林の谷間をゴミ捨て場(ゴミ処分場)として水源を汚し、減反政策によって水田を休耕田として荒れた原野にかえ、ダムや堰によって取水した水を工場や生活用水として汚染し、残り少なくなった汚水を海へ流し込むのです。海岸でも各種の「公共事業」によって汚し続けています。そして最後に、有明海を死の海とする決定的なとどめとなったのが、諫早干拓工事なのです。私たちは、この訴訟を「よみがえれ有明訴訟」と名づけました。

 この訴訟の目指すものは、諫早干拓工事の差止を求めることは当然ですが、しかし工事を止めることができたとしても、有明海が宝の海に戻るわけではありません。さらに有明海の再生を目指す取り組みが必要です。そのためには、直接の被害を受ける漁民だけではなく、有明地域住民全体の結集が必要です。有明地域全体が再生することを目指した取り組みが必要なのです。この訴訟の提訴は小さな一歩かもしれませんが、有明地域再生という壮大な取り組みの歴史的な一歩なのです。

 私たちは、差止を求める仮処分の決定を早急に得るために、超スピードの主張立証を行っています。提訴後半年で6通の準備書面を提出し、私たちに必要だと思われる主張立証をほぼ完了しました。具体的な差止の根拠は、人格権、漁業権(漁業権を行使する権利)です。

 最も主要な争点は因果関係になります。私たちは、漁業被害をもたらしている原因を、「有明海異変」として構成し、事業がその異変原因となっていることを明らかにしました。国は、諫早干拓事業が有明海異変の原因であることを全体としては否定できず、一部分について反論しています。しかしそれは有効な反論とはなり得ません。私たちは、この9月にも、差止仮処分の判断が可能になるよう求めていく決意です。

(法学館LawJournal2003年9月4日配信号より転載)


 

 
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