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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

中国「残留孤児」訴訟――(4)中国「残留孤児」国家賠償訴訟の結審前にあたって

弁護士 長尾詩子

1 はじめに
 2002年12月20日に提訴した中国「残留孤児」国家賠償訴訟関東訴訟は、中国「残留孤児」を支援してきたボランティア、元厚生省役人、を終え、現在、原告本人の尋問を行っています。
 関東訴訟から始まった同訴訟は、現在、全国17地裁で提訴していますが、大阪地裁を始め、次々と関東訴訟の進行に追いつき、来年春から秋にかけて一斉に結審(原告・被告の主張立証は終了し、裁判所が判決を書くことのできる段階とすること)することとなります。
 来年春から秋にかけて結審・解決にむかうであろう中国「残留孤児」国家賠償訴訟の現在の状況と今後の「見所」を、以下、お伝えします。  

2 原告本人尋問の様子
 中国「残留孤児」の原告本人尋問が、他の集団訴訟と大きく異なる点は、@戦争直後の満州での避難、中国で日本人として差別を受けたこと、文化大革命、訪日調査、日本での「中国人」と差別されて経済的にも厳しい生活と歴史の一幕を数時間の法廷で証言しなければならないこと、A日本語が不自由であるため中国語で証言するとなると通訳を介してしか自分の気持ちが語れないことです。
 @については、毎回の尋問で、非常に衝撃的であったり、感動的だったりする体験が語られます。
 中国人の養母に、首から値札を提げられて、売られそうになった原告。日本人であることを隠して生きていくために中国人の夫と結婚したらその後日本人であることがばれて「私の親戚はおまえと同じ日本人に殺されたんだ。」と幸せだった結婚生活が一転してつらく厳しい結婚生活に変わり離婚せざるを得なくなってしまった原告。私には想像すらできないような凄まじい体験の数々でした。こういうお話を聞くと、原告側代理人席で聞いている弁護士も、「やはり、こういった重い人生をすごしてきた人たちには心安らかな老後をおくらせてあげたい。」と改めて強く思います。
 Aについては、尋問をする弁護士にとっては非常に大きな課題です。一般事件であっても、うちあわせどおりに問い答えが続かないのが、証人尋問です(だから、尋問はおもしろいのですが)。しかも、集団訴訟においては、原告自身が自分の思いを十分に裁判所に伝えることが重要です。なのに、日本語ができなくて、弁護士とも十分に意思を通じることができない、裁判官にも直接話すことができない。これは本当に難しい問題でした。
 前回の法廷で、こんな日本語でのやりとりがありました。
 弁護士「あなたは、その時、どう思いましたか。」
 原告 「くやしいと思いました。」
 弁護士「悲しいとは思いませんでしたか。」
 原告 「くやしいと思いました。」
 弁護士「あなたは、くやしいということと悲しいということの違いがわかりますか。」
 原告 「・・・わかりません。」 
 こんなやりとりをみると、日頃何気なくつかっている言葉ですが、人間同士がコミュニケーションするうえで、なんて重要なんだろうと思うのです。そして、日本語ができない原告は、なんて、日々孤独なんだろうと思うのです。
 こんなふうに、中国「残留孤児」の原告本人尋問は、弁護士にとっては非常に難しい、しかしだからこそやりがいのある尋問です。

3 今後の状況
 関東訴訟は、現在、来年3月に結審の予定です。
 弁護団としては、結審後、判決をとりにいくのか、和解をすすめてもらうのか、これは一つの思案のしどころです。また、ほぼ17地裁同様に結審にむかうとなると、どこの地裁で最初に判決又は和解を切り出すのか、これも重要な問題です。
 弁護団は、中国「残留孤児」問題の解決にむけて、そういったことを考えながら、中国「残留孤児」問題の解決にむけての「戦略」を練っていくこととなります。
 中国「残留孤児」のみなさんは、ハンセン氏病訴訟の熊本勝訴判決、東京地裁和解の動きをみて、訴訟を決意したといいます。この中国「残留孤児」の問題でも、ハンセン氏病訴訟のように大きく世論の支持を受けて、解決に道に踏み出せるかどうか、これは今後の動きにかかっていきます。
 このような裁判が社会を動かしていく「流れ」を感じたい方は、是非、12月22日東京地裁での最終原告本人尋問、夕方から開催される裁判報告集会にお越しください。大歓迎です。

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