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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

ハンセン病国賠訴訟(3)――小鹿島問題(つづき)

K.R.記

 ハンセン病小鹿島更生園補償請求弁護団が具体的な争点として主張するのは、本件決定が、ハンセン病補償法の立法趣旨に合致しないという点、小鹿島更生園をハンセン病補償法2条にいう「国立ハンセン病療養所等」に該当しないとした決定は違法であるという点、韓国における被害者に対して補償を行わないのは法の下の平等に反するという点です。

 以下、具体的に中身をみてゆきます。まずは、ハンセン病補償法の前文をみると、次のように書いてあります。

 「我らは、これらの悲惨な事実を悔悟と反省の念を込めて深刻に受け止め、深くおわびするとともに、ハンセン病の患者であった者等に対するいわれのない偏見を根絶する決意を新たにするものである。
 ここに、ハンセン病の患者であった者等のいやし難い心身の傷跡の回復と今後の生活の平穏に資することを希求して、ハンセン病療養所入所者等がこれまでに被った精神的苦痛を慰謝するとともに、ハンセン病の患者であった者等の名誉の回復及び福祉の増進を図り、あわせて、死没者に対する追悼の意を表するため、この法律を制定する」。

 ここに表れた立法者意思を素直に読むならば、日本国政府が行ったハンセン病政策に対する「悔悟と反省の念」のもと、被害を受けたすべての人に対する慰謝と解するのが妥当でしょう。では、補償法において、対象者に対する具体的規定はあるのかというと、第2条がそれに該当します。

 「この法律において、『ハンセン病療養所入所者等』とは、らい予防法の廃止に関する法律(平成八年法律第二十八号。以下「廃止法」という。)によりらい予防法(昭和二十八年法律第二百十四号)が廃止されるまでの間に、国立ハンセン病療養所(廃止法第一条の規定による廃止前のらい予防法第十一条 の規定により国が設置したらい療養所をいう。)その他の厚生労働大臣が定めるハンセン病療養所(以下「国立ハンセン病療養所等」という。)に入所していた者であって、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)において生存しているものをいう」

 この条項を受け、厚生大臣は2001年6月22日、厚生労働省告示第224号により、同法によって補償金を支給されるハンセン病療養所の範囲を定めました。その特徴を、弁護団は3点にまとめています。第1に、「国立、公立、私立といった運営主体を問わず、かつ、入所時期についてもハンセン病療養所に戦前においてのみ入所した者も、補償金支給の対象としている」こと。第2に、「日本の施政権の及んでいない時期におけるハンセン病療養所への入所者をも対象にしている」こと。これは、戦後、アメリカの占領下から国に移管されるまでの間における沖縄県内の療養所を含めたことから導かれます。第3に、「国籍、現在の居住地について一切の制限を設けていない」ことです。

 さらに弁護団は、告示224号1号の「旧癩予防法第3条1号の国立癩療養所」の解釈を示したうえで、それを具体的に列記した告示224号2号を制限列挙であるとする本件決定を批判し、例示に過ぎないとします。また、そもそも同告示2号の形式如何にかかわらず、同告示1号と同視すべき療養所の存在が明らかになった場合には類推適用すべしと主張しています。そして、同政府の行った行為に対して、一方を補償の対象から除外するならば、「ハンセン病補償法の立法趣旨に反し、公平の観念を著しく逸脱し、平等原則に違反する」とし、小鹿島更生園をハンセン病補償法2条にいう「国立ハンセン病療養所等」に該当しないという決定は違法であるとしています。

 日本植民地下の韓国、台湾におけるハンセン病政策は、日本国内同様、皇民化政策の一環として行われていたと考えられます。ここでその被害実態を比較するのは意味のないことで、どちらがより酷かったかということが問題なのではありません。確認すべきことはただひとつです。韓国、台湾にも、日本政府によってはじめられたハンセン病患者隔離政策の対象とされ、人間らしく生きる権利とその人生のすべてを奪われた人が確かに存在するという事実です。

 時を同じくして、法務省は、日本国内においていまだに根強いハンセン病に対する差別・偏見を払拭するべく、本格的な啓発・相談活動に乗り出すことを決めました。一連の温泉旅館宿泊拒否事件を受けて、日本政府が行ってきたハンセン病政策の根深さ、深刻さを再認識したともとれるでしょう。しかし、日本国内に向けての対策に本腰を入れる一方で、現在も生きている国外の被害者は放置するというのでは、あまりにも説得力のない「人権感覚」および「対策」だといわざるをえません。

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