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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

ハンセン病国賠訴訟(9) ソロクト訴訟2

T・O記

7月19日、ソロクト訴訟の結審の日。午前11時開廷にもかかわらず、30分前に傍聴席はほぼ満席状態でした。結局、開廷時間には、支援者や傍聴に来られた方々が廊下まであふれかえりました。なかには、韓国から傍聴に来られた方もいました。

法廷ではまず、韓国から来られたキム・キヒョンさん(89)が意見陳述をしました。89才という年齢、韓国から日本への旅路の直後にもかかわらず、キムさんは、一言一言想いを込めて、自身のこれまでの生涯や、この裁判にかける想いを語りました。

キムさんは、子どもが学校に行けないような貧しい村に生まれましたが、親戚の協力のおかげで、村からただ一人学校へ通えることになりました。学校での成績は優秀で、親戚中の期待を誇らしく感じていました。しかし、11才のとき、眉毛が薄くなり、顔が赤くなり始めました。そして、先生から「お前はライ病だから学校へ来るな。」と言われ、まるで天地が崩れたような思いをしました。「ライ病」は、恐ろしい伝染病だと聞き知っていたからです。その日から、村人はキムさんだけでなく、キムさんの家族にも共同井戸の使用禁止などの差別を行うようになりました。毎日毎日泣いて過ごしていました。そのような状況でも、「最後まで家族と過ごしたい。」という強い思いがあり、家族も同じ気持ちで漢方薬を買って飲ませてくれました。

しかし、その失意の日々の中、ある日突然、大きな刀を持った日本人警官が家にやって来て、「ソロクトへ行けば病気が治る。来なさい。」と言いました。家族と離れることに躊躇しましたが、「病気が治る」という言葉にすがるような気持ちと、何よりその警官の恐ろしさに行くことを決意しました。親戚は皆集まって泣き、まるでお葬式のようでした。

移動中は、漁船の魚を詰め込むところに入れられました。1935年3月にソロクトに着きました。着くと早速、主任から道路を作るように命令されました。その日以降、朝の4時から夜中まで毎日作業を強いられ、30里もの道路、また桟橋、公園、と次々と作業を強いられました。その作業は大変過酷で、首に大きなタコができ、首をまっすぐ伸ばすことができなくなりました。少しでも休もうとすると、棒で叩かれたり、靴で蹴られたりしました。病気治療のため注射を打ったところが化膿し、痛くて我慢できず休むと、看護長が部屋までやって来てその注射のあとを靴で思い切り何度も蹴り、「痛いか。どれくらい痛いか」と聞きました。その時は、あまりの痛さに声も出なかったそうです。

家族は、周囲からの差別で村から北へ移住しました。朝鮮戦争後、そこは「北朝鮮」の領土となり、現在に至るまで音信不通です。「最後まで一緒にいたい」と願った家族の消息すら今はもう分かりません。

キムさんは、言います。「当時、“内鮮一体”のもと、日本の人民として扱われ、日本のために働かされたのに、現在、日本政府がソロクトは日本のものではなかったと言うのはまったく納得がいかない。日本の強制収容さえなければ・・・。ソロクトの道には、私たちの血が染みこんでいる、海は涙、風はため息・・・」と。

キムさんの陳述に続いて、原告弁護団は、@小鹿島更正園がハンセン病補償法2条「国立ハンセン病療養所等」に該当すること、A厚生労働大臣告示224号、1号の「旧ライ予防法3条1号の国立ライ療養所」に該当すること、B少なくとも同告示1号及び2号の類推適用が認められること、の三点を再度主張しました。そして改めて、主張の支柱である「公平の原則」を確認しました。

これに対し、被告は、被害実態だけでは解釈根拠にならない、補償は戦後日本の主権が及ばなくなったところには及ばない、昭和28年法下での隔離政策と小鹿島更正園とは関係が無い、と淡々と応答しました。

原告弁護団は最後に、以下の韓国弁護団代表朴永立団長の言葉をもって最終弁論を締めくくりました。「尊敬する裁判長及び陪席裁判官の皆様、本件訴訟の結果如何が韓国社会のハンセン病人権問題の解決において重要な転機になるということを十分にご賢察いただき、賢明なご判断を切に訴えます」。

とても重大な意義をもつこの訴訟の判決は、10月25日午前10時から、103号法廷で言い渡される予定です

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