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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

日の丸・君が代訴訟(11)――解雇訴訟3

T・O記

2006年12月27日、定年退職後に嘱託として都に再雇用された元教員たちが、卒業式の「君が代」斉唱時に不起立だったことを理由として、契約の更新を拒否され、あるいは内定を取り消されたため、地位の確認と損害賠償を求めて争っている訴訟の口頭弁論が東京地裁で開かれました。この日は96枚の傍聴券に対し、225名の希望者が集まりました。幸い、私は傍聴券を引き当て、傍聴することができました。

この日は、結審ということで、原告と弁護士が最終弁論を行いました。

最初に、原告のKさんが意見陳述を行いました。Kさんは、教師時代、国歌をずっと歌っていたそうです。そして教頭にまでなり、教頭として教師たちに国歌を歌うようお願いしてきた立場でした。その中で、国歌斉唱の是非について、教師たちと議論することもしばしばあったといいます。そんなKさんが、「君が代」の斉唱を拒否したのは、教師たちに国歌斉唱を命じた、いわゆる「10.23通達」に対する懸念からでした。

Kさんは、改憲・教育基本法改悪が戦争国家への道であると認識しており、さらに戦争は教室から始まるとして、教育に対する行政の支配に非常に強く懸念していると述べました。そして、愛国心は重要だが、それは強制ではなく、愛される国をつくれば自然に生まれるものであるとして、こうした国歌斉唱の共生に強く反対する意思を示しました。

そして、たった一度の不起立で嘱託契約の更新が拒否され、解雇されてしまったことについて、再雇用され教師として仕事を続けることが生きがいだったこと、収入が途絶えたことから生活に不安を覚え、夜も眠れないことを訴え、安心して眠れる判決を求めて、意見陳述を終えました。

次に、原告のOさんが意見陳述を行いました。Oさんは、訴えたいことはただ一つ、子どもたちがのびのびと学べる場所を作りたいだけだ、ということを最初に断言しました。そしてそのためには、子どもの顔を見ながら、教師が心を開き、子どもたちに正直に話すこと、耳を貸すことが必要であるが、教師は忙しすぎて、対応ができていないと訴えました。

また、少数意見の尊重が子どもの世界では難しく、教師の援護が必要であるが、10.23通達では、その少数意見の尊重、すなわち卒業式における内心の自由の説明を禁止しており、それはおかしいと主張しました。さらに、卒業式が日の丸・君が代のために行われているようであり、処分をちらつかせての強制に納得がいかず、立つことができなかったという心情を吐露しました。そして最後に、一方的な思想を上から押しつけることがないよう求めて、意見陳述を終えました。

次に、水口洋介弁護士が、地方教育行政法上の再雇用職員の位置づけについて、過去の判決例などを引用しながら、意見を述べました。また、秋山直人弁護士は、本件が「改正」前の旧教育基本法に基づいて解決されるべきであること、その際に新教育基本法の解釈が旧教育基本法の解釈に影響してはならないことについて、意見を述べました。

続いて白井剣弁護士が、「国歌を歌っても内心の自由を侵害しない」という被告の主張について、遠藤周作の小説『沈黙』の中で、役人が踏み絵を踏ませるシーンを、まるで役者のように演じながら、その主張が失当であることを指摘しました。

そして最後に、澤藤統一郎弁護士が、「裁判官の良心」について意見を述べました。澤藤弁護士は、憲法76条3項が、裁判官を拘束するのは憲法と法律、そして良心だけであると指摘して、本件では、担当裁判官3名が、その良心を貫くかどうかで帰趨が決まる、と述べました。そして、憲法で裁判官の良心を定める意義を考えてほしいと訴え、時の権力、社会の多数派に迎合しない勇気を求めました。そして、本件の原告たちは、教師としての良心を選び、この場にいると指摘して、裁判官にも良心を貫いてほしいと訴えました。最後に、澤藤弁護士は、旧教育基本法の前文を朗読した上で、天皇への忠誠が当然の徳目とされていた明治憲法下の精神が、いま「日の丸・君が代」の強制で復活されようとしている、憲法・教育がないがしろにされたとき、時代が逆行するかもしれない、そうならないよう、裁判官の良心に期待する、と述べて意見陳述を終えました。

以上の意見陳述をもって、本件は結審しました。判決日は追って指定とされました。今年度中には判決が言い渡されると予想されています。昨年の9月21日の予防訴訟難波判決のような、歴史に残る名判決を期待したいと思います。

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