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日の丸・君が代訴訟(12)

T・O記

 神奈川県教育委員会が県立高校における入学式・卒業式における君が代斉唱時に起立しなかった教職員の氏名を校長に報告させていたことについて、2007年10月24日、神奈川県の個人情報保護審査委員会(以下、単に「審査会」と呼びます)は、それが県個人情報保護条例(以下、単に「条例」と呼びます)の禁止する「思想・信条に関する個人情報の収集」に該当するものだと答申しました。

 入学式・卒業式において、教職員に対し、「君が代」斉唱時の起立を義務付けることは、東京都だけではなく神奈川県でも行われています(これについては、神奈川県でも訴訟が進行中です)。そして、起立しなかった教職員の氏名を校長が調べ、県教委に報告していました。神奈川県では、不起立者に対して、東京都のような懲戒処分を科してはいませんでしたが、それでも不起立の事実を県教委が把握することで、将来的に何らかの不利益が課されるかもしれませんし、何の不利益もないとしても、心理的な圧迫感を覚え、不起立にちゅうちょすること(いわゆる「萎縮効果」)も考えられます。そうしたこともあり、不起立だった教職員が、こうした情報の利用停止を求めたと考えられます。

 さて、以下では、審査会が利用停止を答申した理由について見ていきたいと思います。

 条例第6条は、思想信条に関する情報などの取り扱いを原則として禁止しています。そして、教職員は、「君が代」斉唱時の不起立という行為が、思想信条の発露であって、その情報は、条例6条で利用が禁止されていると主張したわけです。他方、県教委側は、単に不起立の事実を記載しただけであり、その理由まで問うているわけではないから、思想信条に関する情報ではないと主張していました。

 審査会は、東京都や神奈川県で、「君が代」斉唱時の起立義務不存在確認訴訟が提起されていること、不起立の根拠として、「君が代」が過去に果たしてきた役割に対する否定的評価が挙げられていること、実際に本件異議申し立てをした当事者が、不起立は国旗国歌に対する評価・価値観に基づくものと主張しているなどから、不起立という行為は、異議申立人の政治的信念及び個人の人格的形成の核心をなす人生観、世界観の発露であると認め、条例第6条が利用を原則として禁ずる思想信条に関する情報であるとしました。

 こうした答申に対し、県教委側は、「尊重せざるを得ない」とコメントしているそうです。また、その場合、この情報は破棄されることになるそうです(神奈川新聞10月29日付)。

 「君が代」斉唱時の不起立が、個人の思想信条の発露であるというのは、憲法学を専攻する私からすれば至極まっとうな見解です。しかし最高裁や東京都教育委員会などは、こうした見解を取らない、あるいは思想信条の発露だとしても簡単に制約を容認しています。今回の審査会の決定が、そうした流れに待ったをかけるものとなることを期待したいと思います。

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