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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

日の丸・君が代訴訟(5)─服務事故再発防止研修命令取消訴訟

T・O記

 2005年3月30日、東京地裁で服務事故再発防止研修命令の取消を請求している訴訟の第3回口頭弁論期日がありました。この日も100人を超える傍聴者が集まり、法廷に入れない人もいました。

 この裁判は、いわゆる10.23通達に基づいて、「君が代」斉唱時に起立するよう職務命令を受けた教師が、その命令に従わず不起立だったことに対して、その不起立を「事故」とみなし、「事故」の再発を防止するための研修を受けるよう命令を受けたため、その職務命令を取り消し、あわせて慰謝料を請求している訴訟です。

 この訴訟の提起と同時に、原告らは、研修処分の執行停止を申し立てました。この申し立てについては、2004年3月23日に却下決定がありました。その中で東京地裁は、「繰り返し同一内容の研修を受けさせ、自己の非を認めさせようとするなど、公務員個人の内心の自由に踏み込み、著しい精神的苦痛を与える程度に至るものであれば、そのような研修や研修命令は合理的に許容される範囲を超えるものとして違憲違法の問題を生じる可能性がある」としました(判例時報1871号142頁)。

 研修は、2004年8月2日・9日に行われました。この研修においては、研修の趣旨目的等を含め、質問が一切受け付けられない、専門研修では事前に課題を提出させられ、人によっては「様式がととのっていない」と再提出を命ぜられるなど、東京地裁の決定に反するような内容の研修が行われました。また、すでに学校行事としての遠泳指導が予定されていたにもかかわらず、研修への参加を強制された教師もいました。遠泳は生徒の生命にかかわる危険を含むものであり、教師の適切な指導が必要とされるにもかかわらず、です。ほかにも、研修のために、部活動の練習試合を延期せざるを得なくなったり、合宿の初日に参加できなかったり、別の研修に参加できなかったりした教師がいました。

 こうした研修を命じられたため、教師たちがその命令の取消と慰謝料を求めて提訴したのが本件です。3月30日の口頭弁論では、研修がすでに行われてしまったため、命令の取消し請求については、訴えの利益がないとして、原告側が取下げの手続きを行い、訴訟を国賠請求に絞ることにしました。

 続いて、代理人の一人である山中弁護士が、本件研修命令の違法性について、弁論を行いました。山中弁護士は、学校教育法42条3号が「〔高等学校では〕 社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、個性の確立に努めること」と規定していることに触れ、他方で、教師に対し「君が代」の強制の批判を禁ずる処分を行うことの矛盾を指摘しました。また、ILO「教員の地位」勧告第6項や学校教育法28条6項から、教師は専門職として教育をつかさどることを指摘し、生徒の批判精神を養うためにも、教師の自主性が強く認められるべきであって、「君が代」についても、教師の自主性を尊重すべきであると主張しました。加えて、日程の変更をすべき事情があり、かつそれが可能であったにもかかわらず、日程の変更をせず研修を行ったことについて、それが教師に対する「精神的ないじめ」であると主張しました。

 その後、弁護士会館で、報告集会をかねた記者会見が開かれました。そしてこの日の午前中に、臨時の都教育委員会が開催され、不起立者に対する処分が決定されたことが報告されました。また、卒業式の日に、学校へ公安警察や都教委のメンバーが何人も来て、卒業式の監視に当たっていることも報告されました。さらに今年は、初めて卒業式の予行練習でも「君が代」の斉唱があり、そこで不起立をした教師がいたこと、そしてそれが都教育委員会に報告されたということが明らかにされました。

 東京都における「君が代」の強制は、度合いを強めています。ある高校では、卒業証書を受け取った生徒が、都教委に対して、「先生たちをこれ以上いじめないでください」と訴えたそうです。卒業式がいったい誰のために行われるのか、もう一度この点に立ち戻って考えることが重要ではないでしょうか。

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