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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

「一人一票」実現・今年の参院選で判断分かれる(東京高裁)

H・T記


 議員定数不均衡の問題、すなわち、各選挙区における人口数と選挙される議員数との比率の格差の問題について、最高裁は長い間議員定数を人口数に比例して配分することは国会の裁量に属する(憲法47条)とし、あげて立法裁量の問題としてきました。しかし、各投票が選挙の結果に対して持つ影響力の平等、すなわち投票価値の平等(憲法14条1項)は、民主主義国家の基本です。最高歳は、1976年、ようやく衆議院について、投票価値の平等を認め、当時約1対5の格差を違憲とし、現在では1対3の基準を示唆しています。

 これに対して参議院(選挙区)については最高裁は、遅れて1996年に、事実上都道府県代表的な意義ないし機能という要素を加味して衆議院より基準を緩和し、1対6.59の格差について違憲状態(「違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態」)としました。その後は6倍未満を容認する合憲判決が定着していました。

 考えてみれば、選挙権は民主政を支える基底的な権利であり、選挙権者の間の徹底した形式的な平等が要求されます。一票の格差は、「何倍」ととらえるのではなく、主権者である私たち一人ひとりの「自分ごと」の問題として、「自分は何票だろう?」という問題として理解すると権利性がより明確になります(11月13日付け朝日「be」伊藤真)。

 この観点から、昨年8月の衆院選挙(小選挙区)について全国の高裁で違憲訴訟が提起され、7つの高裁で違憲判決・違憲状態判決が出されています(こちらを参照)。これらは上告され、9月8日、大法廷に回付されました。

 一方、今年7月の参院選挙(選挙区)に関しては、全国14の全高裁・高裁支部に違憲訴訟が提起され、そのトップを切って先週の17日、東京高裁で5件の判決がありました。うち、4件は合憲判決でした。東京選挙区を対象とした判決(南敏文裁判長)では、「違憲」判決でした。

 南判決は、参議院について、1996年の最高歳判決が「違憲状態」という控え目な表記をしたに止まるのに対して、明確に「違憲」とした判決として各紙で注目されています。「選挙区内で1人1票制(公選法36条—筆者注)が守られていればよいとの議論は、過去に黒人差別を正当化するために用いられた『別に、だが、等しく』(separate but equal)」の考え方の復活で、正当化できない」と判示し、東京は1人0.228票であるという選挙民の視点から捉えています。判決は、都道府県単位で選挙区とする現在の制度についても触れ、「一定の地域を重視すれば、選挙人を居住場所によって差別し、人口が少ない県の選挙人の投票価値を大きく設定することを是認する結果になる」とも指摘しました。衆院選のブロック制を引き合いに、「参院選でも都道府県をまたいだ選挙区の設定は十分可能だ」と踏む込んだ提案をしています。

 また、「1票の格差問題は、民主主義に関する近年の国民意識の成熟度を考慮に入れるべきだ」とする部分も注目されでしょう。公務員の休日におけるビラ配布が国家公務員法にいう「政治的行為」に当たるとして起訴されたいわゆる堀越事件について、近時東京高裁が「国民の法意識は‥‥大きく変わった」として無罪とした判決(2010.7.3)と共通する問題意識が感じられます。

 なお、選挙は違憲ですが、これまでの判決どおり、混乱を避けるため無効とはされません。

 参院選(選挙区)に関して高裁に継続しているその余の事件うち12箇所の裁判所では来年の2月までの間に判決期日が指定されています。他の1件の判決も遠くないでしょう。マスコミによると、高裁判決が出そろった段階で大法廷が判断を下すと報道されています。

<南判決についてのコメント>

(升永英俊弁護士)
6千万人の1人1人が動かない限り、最高裁の違憲判決もありえない、民主主義はありえない。

(久保利英明弁護士)
今日の判決があるおかげで違憲判決を出しやすくなった。訴訟は皆さんが支えてくれなければ勝てない。次は大法廷判決を狙う。国民の常識だからそれに寄りかかっても大丈夫、というように、裁判官の心を掴むことができるのは皆さんのみ。心からありがとう。

(伊藤所長)
南裁判官には感謝したいと思うが、ありがたい判決をいただいた、ではなく、私達が、皆さんが、勝ち取ったんだ、ということ。私達は主体的に行動する。それしかない。民主主義は、他の国では人の命を奪って実現。それを言葉だけで実現できるのはなんとすばらしい。大変なことつらいことがあって当たり前。これからいろいろ壁があるかもしれないが皆さんの力があればこそ、必ず民主主義の国を実現できると思っています。

違憲判決の要旨はこちら(PDF)


 
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