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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

「一人一票」裁判、最高裁大法廷で口頭弁論開かれる

H・T記


 「1票の格差」が最大で2.30倍だった2009年8月の衆院選小選挙区選挙の無効を求めて、全国の高裁に訴訟が提起されました。そのうち7件で違憲判決・違憲状態判決、2件の合憲判決が出ました。違憲判決・違憲状態判決の多さは画期的なことです(関連情報)。この9件について23日午後、最高裁大法廷で口頭弁論期日が開かれました。大法廷で口頭弁論が行われるのは稀なことであり、最高裁が重視していることを示しています。

 この日、原告側は既に提出してあった書面の陳述に加えて、3名の代理人がそれぞれの立脚点を踏まえ、口頭で概要以下のように弁論しました。

 まず、升永英俊弁護士は、過去の定数是正訴訟は法の下の平等という人権論に基づいた主張をしていたが、本件では、代議制民主主義本来のあり方という統治論を主張するものであると述べました。現状は人口の少数が国会議員の多数を選び、人口の多数が国会議員の少数を選んでいる「負の代議制民主主義」であるが、人口の多数が国会議員の多数を選び、人口の少数が国会議員の少数を選ぶ本来の代議制民主主義に変えなければならないということです。そして、本来の代議制民主主義を実現するためには、人口比例の原則により選挙する以外にない、これこそ憲法前文の冒頭に書かれている「正当な選挙」であると陳述しました。

 次いで、国民はこれまでの60年間、「清き1票」ということを信じてきたが「清き1票」は実は1人0.8票や0.2票だったのであり「裸の王様」だったと述べました。定数不均衡を各選挙区の1人当たりが持つ票の比率の観点から捉え直すものです。負の代議制民主主義を5年も続けて行くと、韓国などFTA(自由貿易協定)を推進している国々と世界で競争して行くうえで悲劇が待っている、それを解決するのが「一人一票」であるとしました。

 そして、この問題は選挙の当事者で構成される国会や国会に基礎を置く内閣では解決することはできず、最高裁こそが違憲立法審査権により代議制民主主義の基礎を作る究極の国家権力を行使する責務を負っていると述べました。

 2人目の久保利英明弁護士は、45年前に芦部信喜教授のゼミで、2倍未満の格差なら合憲だと教わったが、なぜ2倍なのか納得できないでいた、我が国のガバナンスはすべて「一人一票」で行われており、そうでないのは国会議員の選挙だけであると述べました。例えば株式会社では株主の議決権が等価値であるのは当然のこととされています。
 さらに、昨年12月に西岡参院議長が提案した1票の最大不平等を1票対0.867票(議員1人当たり最大人口格差1.153倍)とする選挙区割り案(9ブロック制)については政界では反対論が強い、ここは最高裁の出番であると述べました。

 3人目は伊藤真弁護士です。伊藤弁護士は、法律家を目指す学生たちに、2倍未満の格差なら正しいと教えてきたが間違いだった、2倍ということは0.5票しかないということであり限りなく「一人一票」に近づけることこそが憲法上要請されていると述べました。少数者の人権を守るためにある憲法が、前提である民主主義のスタートである選挙の手続的なところで少数者の権利を侵害しているのは、人間の尊厳(憲法13条)にも関わる重大な問題であると主張しました。「一人一票」が憲法上の原則である以上、これを制約するには別の憲法上の理由が必要だが、それは見出しがたいということです。

 続いて、被告の選挙管理委員会は、都道府県は行政、経済、社会生活などの面で一つのまとまりを持っており、これを配慮することは合理的だと主張しました。経済的利益を追求する株式会社とは明らかに異なる、全選挙区の6分の5以上は2倍以内の格差におさまっており選挙全体で著しい格差があったとは言えないと反論しました。

 弁論はこの日の1回で終わり、判決言渡し期日は追って指定されることになりました。

 その後に行われた記者会見では、升永弁護士から比例区は合憲だと考えているので提訴していない、久保利弁護士からは最高裁の判決をしっかり監視して国民審査で×をつける権利を行使することが重要である、伊藤弁護士からは都道府県という地方自治法の制度でもって憲法上の要請である「一人一票」を制約するのは法の支配に反するなどの説明がありました。


 
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