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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

北の大地でも全員勝訴! − 北海道原爆訴訟

弁護士  高崎 暢

*たかさき法律事務所(札幌市中央区大通西14丁目みふじビル3F)「PLATEA」(2009年1月1日)に掲載されたものを同事務所のご了解を得て紹介します。
(法学館憲法研究所事務局)


9年のたたかいと画期的な判決

 昨年9月22日、札幌地裁は、その年4月から運用が始まった「新基準」で原爆症として認定された3人を除く4名全員を原爆症と認定した。肝機能障害、慢性甲状腺炎、高血圧症についても被爆との関連を認めた画期的な判決であった。
 北海道原爆訴訟は、1999年10月、安井さんが提訴し、2003年4月に起こされた集団訴訟と併合され裁判が進められてきた。9年間にわたる、文字どおり被爆者の生命を削る裁判であった。「病気を原爆放射線のせいだと認めて」と提訴した原告の約5人に1人が生命を落す中、原告が生きて勝訴判決を聞くことができたことは格別の意味を持つ。

国の控訴は犯罪行為

 国は、集団訴訟で、現在12連敗中である。「新基準」の運用後も6連敗。しかし、国は控訴した。被爆者に対する犯罪行為というべきである。
 ところで、戦後、国が犯した被爆者に対する犯罪はこれが最初ではない。
 まず、原爆投下後12年間、被爆者になんらの援護もしなかった。この間、熱傷や急性白血病で志望した人は、4万3899人に及んだ。また、被爆したと言うだけで、結婚、就職などで差別され、生活困難者や未来に期待が持てずに自殺したものも多くいた。被害は一層拡大された。一方で、アメリカの占領下で、被爆の事実を隠蔽し、被爆者を放置した。
 原爆投下は、国が推し進めてきた侵略戦争の結果であるゆえに、原爆被害の把握と救済措置、被爆者の実態調査、そしてその結果を国民及び世界に対し公開報告する特別の責任と義務が国にはあったが、国は、この責任と義務も果たさなかった。そして、今日まで国は被爆者に対する国家補償を放置してきた。
 以上の犯罪行為は、国が固執してきた「DS86」「原因確率論」などの「放射線起因性の判断基準にはたくさんの問題点がある」という、これまでの判決の到達点を無視し、性懲りもなく控訴を繰り返したという罪の原罪である。
 また、新たに制定した「新基準」の運用も、敗訴判決を回避する姑息な手段というだけでなく、10年近く裁判で争ってきた原告の原爆症の認定を、一片の紙切れを郵送してくるだけで済ませた。そこには「長年ご迷惑をおかけした」という人間の顔も言葉もない。それは、被爆者の原爆症と認定して欲しいという気持ちを弄ぶものであり、国の冷酷さ、傲慢さそのものであった。
 被爆者の高齢化は進み、原告・被爆者に残された時間は長くはない。国が、今、直ちにやるべきことは、これまでの被爆行政を改め、「新基準」を抜本的に見直し、各地で行われている原爆症認定集団訴訟を全面解決することである。
 「必ず勝利するという確信でたたかってきた。核兵器がある限り、被爆者はなくならない。たたかいは死ぬまで続けます。」という原告の言葉が胸に響いた。そして、その言葉は、核兵器廃絶、被爆者の全面救済には、日本の核政策の転換、すなわちアメリカの核戦略からの脱却を意味している。


 
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