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ホームレスってどんなひと?

弁護士・河村健夫

1 ホームレスってどんなひと?
 皆さんは、「ホームレス」という言葉から、何をイメージしますか? 公園の片隅に立つブルーテントですか? 路上にたたずむ初老の男性でしょうか?
 ホームレス自立支援法2条は、「「ホームレス」とは、都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者をいう」と定義します。
 この定義に従い、全国のホームレスの数を集計すると約3万人。ホームレスの方は移動が激しいため正確なカウントは困難なのですが、それでも@調査が始まった平成11年(集計数1万6247人)から一貫して増加傾向にあるA従来は大都市中心であったが、近年地方都市でもホームレスが増加している、という傾向がうかがえます。
 今回はその路上生活者の現状を紹介したいと思います。

2 なぜ、路上生活者になるのか?
 路上生活者に対しては、ある種の偏見があります。「怠け者」「自ら望んで通常の社会生活を拒否し路上生活をしている」といった社会的偏見です。新宿の段ボールハウスを強制撤去した青島元都知事は「あの方々は独特の人生観と哲学をおもちで・・・(段ボールハウスに)お住まいになっている」と発言しましたが、一時期はこういった偏見が横行していました。
 しかし、事実はまったく異なります。
 想像してみてください。厳しい冬の寒さ。食料は不規則・不満足で、少年たちの遊び半分の襲撃に怯えなくてはならない。誰がこのような生活を、自ら望んで選び取るでしょうか。
 誰もが路上生活は嫌です。私は路上生活者向けの法律相談に1年以上にわたって参加してきましたが、相談内容は圧倒的に借金問題です。つまり、皆、路上生活に陥る直前に「あがく」わけです。仕事を失い、借入に借入を重ねて路上生活突入を回避しようとするが、それもかなわず路上生活に追い込まれる・・・これが平均的な姿でしょう。
 その意味で、路上生活者問題はすぐれて労働問題なのです。

3 ホームレス問題に対する社会施策の変遷
 ホームレス問題に対する社会施策は、概ね次のように変化してきました。
(1) 排除政策
 ホームレス施策の第1期は、排除政策でした。
 1995年から96年にかけて、東京都は新宿西口に居住する路上生活者の一斉排除を行い「動く歩道」を建設し、それでも埋めきれないスペースには、棘状の「オブジェ」(東京都)を設置して路上生活者を完全排除しました。
 しかし、その後も路上生活者は減少せず、排除政策の破綻は客観的に明らかとなったのです。
(2) 自立支援事業政策
 第2期は自立支援政策です。2002に成立した自立支援法はこの第2期の政策の産物です。
 自立支援政策は東京・大阪で先行して実施され、その後名古屋・横浜など各地で実施されています。
 内容は各地によって異なりますが、おおむね数ヶ月間、自立支援施設に路上生活者を入居させ、その間就職あっせんや住居のあっせんを行い、数ヶ月間の入所後には仕事も住居も揃えて退所に至る、という共通点があります。
(3) 新たな動き
 東京都は、平成16年に新しい施策を開始しました。地域生活移行支援事業というもので、公園などの路上生活者を都営住宅等に低額な家賃で入居させるとともに、半年間は公園清掃などの仕事をあっせんして月数万円の収入を確保させ、その間就職先を探して自立する、という内容です。
 路上生活者が施設を経由せずに直接地域居住を開始し、当初は公的就業が確保される点に新味がある政策といえます。

4 ホームレス施策の問題点
 ホームレス施策は上記のような変遷を経ているのですが、そこには大きな問題点が横たわっています。
 1つは、上記施策は果たして憲法25条の水準を満たしているかという問題であり、もう1つは上記施策が「排除政策」から完全に脱皮し得たかという問題です。
(1) 憲法25条との関係
 憲法25条は、健康で文化的な最低限の生活を送る権利を認め、その具体化立法として生活保護法があります。生活保護を受けた場合、単身者で月額十数万円相当の支給がなされます。
 路上生活者の月収は2〜3万円平均というところです。
 では、なぜ路上生活をやめて生活保護を受けないでしょうか?
 答えは、生活保護行政が極めて抑制的な保護運用を行い、路上生活者が生活保護を申請しても受け入れられない例が多発しているためです。また、路上生活者の側にも「住民票がないと生活保護は無理」「55歳以下の場合は、まだ就労可能だから生活保護は無理」といった誤った知識が流布され、保護申請を諦めてしまう現実があります。
 ところで、自立支援政策は従来「法外支援」と称されていた施策をまとめたという側面があります。「法外」とは生活保護法の枠外という意味ですから、単純に法外支援の寄せ集めが自立支援政策であれば、それは憲法25条以下の内容に他ならなくなります。
 現在、公的には自立支援政策は生活保護と同等であるとされていますが、その内容を常にチェックしなくては、生活保護法以下の施策を容認するという憲法25条違反の問題が生じてしまうのです。
(2) 排除政策復活の恐れ
 ホームレス施策における排除政策は一時期鳴りを潜めましたが、最近、徐々に復活してきました。
 東京都墨田区では2004年5月に隅田川桜橋付近で生活している路上生活者らに対し、一週間の猶予期間中に出ていくように通告し、退去を迫りました(当事者の反対運動、弁護士等法律家有志による申し入れなどにより、強制撤去は実施されず)。また、2004年10月には名古屋市白川公園で生活する路上生活者らに対し、名古屋市が退去を要求する事件が発生しました(11月現在、緊迫した情勢が続いています)。
 さらに、東京都では地域生活移行支援事業の実施とともに公園などで生活する路上生活者らを「目に見えて減らす」ことが目標とされ、移行後の公園に新たな路上生活者を入れない措置がとられる危険があります。

5 法律家として
 このような状況のなかで、法律家が果たすべき役割は多岐にわたります。ホームレスの方々は、重層的な背景をもって路上生活を始めています。主要な背景はやはり労働問題(失業)なのですが、それ以外にも家族関係(離婚・相続)とか借金の問題とか、それぞれ法律家が入らないと解決困難な事件も少なくありません。
 ホームレスを排除するという思考は、ホームレスは自分とは異質の存在であるとの感覚から出てきています。そうではなく、彼らも私たちも社会の一員であるという事実を広めるべく、これからも地道にホームレス関係の仕事をしていこうと思っています。
 なお、ホームレスに対する法律相談の補助者を募集しています。興味がありましたら私(電話 03-6202-0033 FAX 03-3273-1306)までご連絡いただければアレンジします。お気軽にお問い合わせ下さい。


 
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