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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

「服務事故再発防止研修処分取消等請求裁判」14回口頭弁論(最終弁論)

M・K記

2007年3月15日午前11時、東京地裁103号法廷の傍聴席をほぼ満席にして、「服務事故再発防止研修処分取消等請求裁判」の最終弁論が開かれました。2004年7月16日の提訴から、のべ13回の口頭弁論を行いましたが、今回で弁論終結です。137人の原告を代表して2人の原告と、5名の弁護士が、1時間にわたって最終陳述しました。

最初に証言したOさんは、職務命令による教職員への起立・斉唱の強制は、間違っていると考え、卒業式で起立しませんでした。その理由は、第1に、起立・斉唱命令は、日本に信条や民族的ルーツを異にする様々な人々が住んでいるという事実や過去の歴史を度外視しており、個人や民族の尊厳を理由として起立できない人を傷つけることにつながるということ。第2に、同命令に従うことが、たとえわずかでも、起立を余儀なくさせられるか起立できずに孤独に座っている生徒の尊厳を傷つけることになるのであれば、起立できないと考えたからです。
研修会場では、入口の外に都の職員の見張りつきの狭い部屋に大勢で収容されました。Oさんにとっては、この様な状況下で行われた研修は、「過去の歴史を考えるな。」「何も考えずに立っていろ。」と命令された事に等しいものと感じられました。

次に陳述したTさんは、卒業式で起立しなかったため、式後に校長室に呼び出され、不起立を確認されました。その際、校長の後ろに4人の都の職員が同席していました。その異様な雰囲気に、Tさんが「あなたたちは誰ですか」と尋ねましたが、4人は応答せず、校長が「都の職員の方です」とのみ答えました。その後、人事委員会に処分の不服申立をしましたが、申立中であるにもかかわらず研修命令が下され、やむを得ず8月の研修に参加しました。研修内容は地方公務員法の説明でしたが、講師は受講者の質問を一切受け付けず、説明が終わると逃げるように帰ってしまいました。Tさんは、あまりに形式的であり、馬鹿にされた感じがしたと述べました。

次に、5人の弁護士が弁論しました。まず、山中眞人弁護士が再発防止研修の特質について話しました。再発防止研修は、式典で不起立・不斉唱により処分を受けた教職員のみが対象である。研修の目的は、不起立に対する「反省」を迫り、二度と不起立・不斉唱を繰り返さないことを誓約させることにある。従って、研修自体が、彼らの思想・良心の自由の改変を狙ったものである。加えて、本来の研修制度は、体罰やわいせつ行為等を行った教職員に対して行われることを想定しており、研修がこのような形で行われることは、研修制度の濫用でもある。と述べました。

金哲敏弁護士は、研修の違憲性について弁論しました。原告らの日の丸・君が代に関する信条は、職務命令という外部的行為によって明らかにされた。再発防止研修が思想の改変を意図したものであることは、横山教育長(当時)の発言からも明らかである。従って、本研修により公権力が原告らの思想・良心に直接介入しており、このことは、思想・良心の自由を保障する憲法19条に違反する。と述べました。
さらに、そもそも君が代自体がもつ歴史的背景・歌詞の意味の理解について、人々の間で大きな見解の相違がある。多様な意見を尊重することは、自由な社会や民主主義を守るための前提条件であり、その根本を保障するものが憲法19条である。従って、教職員の思想・良心の自由を侵害する恐れのある研修を、むやみに認めてはならない。と述べました。

最後に、加藤文也弁護士が、裁判所に対する要望を述べました。第1に、現在もなお、不起立教員に対する研修を含め、式典での君が代斉唱時の起立・斉唱命令が発せられる状況が続いており、その中で多くの教師が苦しんでいる。第2に、ピアノ伴奏拒否事件最高裁判決少数意見(2007年2月27日)や予防訴訟(国歌斉唱義務不存在確認等請求訴訟)東京地裁違憲判決(2006年9月21日)の趣旨を十分に配慮するべきである。第3に、現在の都・都教委が行っていることは、教育現場の破壊行為に他ならず、原告ら教員の想いを理解してほしい。これら3点をあげ、弁論を終えました。

原告の中には、自己の宗教的な信条や民族的ルーツから、君が代を歌うことができない人がいます。また、生徒の君が代に対する考え方も一人ひとり異なるため、教師が命令に従って起立・斉唱することは、生徒の多様な考え方を拒絶することになるとの教師としての想いから、斉唱を拒否する人もいます。
研修会場では、「不起立・不斉唱を繰り返した場合、懲戒免職になる。」点が強調されたそうです。これは、不起立教員の思想改変の強要とほぼ同義です。10.23通達の内容自体が信じがたいものですが、再発防止研修も対象・方法すべてが極めて異常なものです。こうした都教委のやり方は、教職員の思想・良心の自由を否定することで教育現場を萎縮させ、ひいては子どもの個性に応じた教育をも拒絶することにつながるのではないでしょうか。

判決は、7月19日午前11時30分より、東京地裁103号法廷にて言い渡されます。

 

 

 
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