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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

薬害イレッサ訴訟(4)

T・O記

2006年12月13日、薬害イレッサ訴訟の口頭弁論が開かれました。準備書面の陳述をする手続の後、原告側代理人から意見陳述がなされました。まず、木下正一郎弁護士が、被告アストラゼネカ社が提出した報告書について、以下のような意見を述べました。

アストラゼネカ社の報告書とは、イレッサを投与した場合と、イレッサ以外の他の抗がん剤を使用した場合とを比較し、イレッサを投与した場合に、急性肺障害・間質性肺炎の発症するリスクが高くなるかどうかを試験し、その結果についてのものです。報告書によれば、他の抗がん剤に比べ、イレッサを投与した場合には、間質性肺炎等が発症するリスクは3.23倍高くなるというものでした。

また、イレッサ投与により間質性肺炎を発症した場合、死亡率は31.6%、つまり10人のうち3人以上が死亡するという極めて高いものでした。薬剤が原因で間質性肺炎を発症した場合、ステロイド療法に効果がなければ、手の施しようがない恐ろしい疾患です。つまり、イレッサは、致死的な間質性肺炎を、他の抗がん剤よりも3倍以上発症させる危険な薬剤だったわけです。

報告書から、以下の3点が明らかになりました。第一に、イレッサの投与と間質性肺炎発症の関連性が強いことです。イレッサの投与後に間質性肺炎を発症した場合、イレッサの投与によってそれを発症したと推定すべきです。

第二に、イレッサが非常に危険であり、抗がん剤としての有用性がないことが、より明確になったことです。これまでも、販売開始後3年足らずの間に、間質性肺炎等で600名以上もの死亡者を出しており、他の抗がん剤よりも間質性肺炎等の発症率が高いことは予想されることでした。そのことが被告アストラゼネカ社自身の行なった試験でも確認されたことの意味は大きいといえます。

第三に、イレッサの危険性をより明確にしたことで、そのような危険な物質を「夢のような新薬」「主な副作用は、下痢、発疹」などと虚偽、誇大な宣伝をして販売し、被害を拡大させた被告アストラゼネカ社の悪質さを浮き彫りにしました。

イレッサは世界で先駆けて日本で承認され、日本で最も多くの被害者を出しました。イレッサに延命効果がないという試験結果が明らかになったとき、ヨーロッパでは承認申請の取り下げ、アメリカでは新規患者への投与が禁止されました。しかし日本では何らの対応もなされず、販売が継続されました。今回の報告書に対しても、厚労省は形だけの検討会を行っただけで、何も対応を取りませんでした。イレッサの販売によって、被害は拡大し、アストラゼネカは莫大な利益を得ます。

肺がん患者の命を軽視し、製薬会社の利益を優先するような、理不尽なことを認めていては、薬害の防止など絶対にできません。薬ともいえない危険な物質を、よく効く抗がん剤として販売した被告アストラゼネカ社と、それを認めた国は、600人以上もの命を奪った責任を問われなければなりません。

以上のような意見陳述に続いて、代理人の阿部哲二弁護士が、イレッサの適応範囲を拡大したことに対する国の責任について、以下のような意見陳述を行いました。

西日本訴訟の原告・清水英喜さんは、肺がんと宣告されたあと、初めての抗がん剤の治療、すなわち、ファーストラインとしてイレッサを服用し、間質性肺炎となって生死の境をさまよいました(清水さんの意見陳述については、薬害イレッサ訴訟(2)をご覧下さい)。

しかし、イレッサが抗がん剤として承認されるための臨床試験は、別の抗がん剤の治療暦のある患者、つまり、セカンドライン以降の患者に限られていました。したがって、ファーストラインでの患者についてはデータがなく、イレッサの有効性・安全性は確認されていません。それゆえ、仮にイレッサを承認するとしても、セカンドライン以降に限定されるべきでした。実際、アメリカではセカンドライン以降、カナダではサードライン以降に限定されています。ところが日本では、ファーストラインから承認されました。これは、イレッサの販売に都合が良いからだと考えられます。

東日本訴訟の原告・近澤昭雄さんの娘である近澤三津子さんは、イレッサを処方される一方で、放射線療法が併用されました。その後、間質性肺炎を発症し、死亡しました。

ところが、イレッサと放射線療法との併用については、全く臨床試験が行なわれていません。そのため、仮にイレッサを承認するとしても、放射線療法との併用は禁止すべきでした。しかし、禁止どころか、使用上の注意欄に併用についての臨床試験が行なわれていないことさえ記載されませんでした。これは怠慢ではなく、会社の販売戦略に都合の良いように臨床試験の範囲を超えて適応を拡大したものとしか考えられません。

以上のように述べ、阿部弁護士は、国と企業の責任を追及すべきだと主張しました。

その後、5月に行なわれる原告側の証人に対する反対尋問の日程を巡って、原告と被告の意見が対立しました。原告側は、主尋問と反対尋問を同日にすべきだと主張しましたが、被告側は、反対尋問のための時間が必要だとして、1ヵ月後に延ばすよう求めました。裁判所の合議の結果、被告側の主張が通り、反対尋問については7月18日に行なわれることになりました。

法廷が終了した後、隣の弁護士会館で、報告集会が行なわれました。弁護団は、被告側が証人申請してきた2人の医師について、イレッサを推進した張本人であって、ぜひ聞きたいことがたくさんあると、意気盛んでした。

次回から、いよいよ証人尋問が始まります。証人は、別府宏圀医師です。薬害スモン訴訟でも被害者の支援にまわり、活躍した医師です。次回期日は、2007年2月7日午後1時半から、東京地裁で開かれます。興味のある人は傍聴に行かれてみてはいかがでしょうか。

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