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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

薬害イレッサ訴訟(6)

T・O記

2007年5月23日、薬害イレッサ訴訟の口頭弁論が開かれ、京都大学医学部付属病院の福島雅典教授に対する証人尋問が行なわれました。100席ほどの傍聴席は満席でした。

福島教授は、はじめに、イレッサの承認をすべきでなかったと断言しました。その理由として、臨床試験等の報告において、死亡を含む重篤な副作用が報告されていたこと、延命効果の証拠がないこと、リスク・ベネフィットのバランスが悪いことなどを挙げました。そして、多くの死亡例があったことが問題だと重ねて強調しました。

福島教授は、臨床試験において、133名の被験者のうち、3名に副作用として間質性肺炎が発症し、うち1人は人工呼吸器をつけ、ステロイドが大量に投与されたことを指摘し、こうした治療は、この症状が極めて重篤だったことを示していると述べました。また、間質性肺炎は、患者にとって極めて苦しいものであり、治療も困難なことから、医療現場では特に注意すべき症状だと認識されていることを指摘して、そうした副作用をもたらすイレッサは、極めて危険なものであったと述べました。そして、こうした危険性を、アストラゼネカ社も厚労省も認識していたはずだと、福島教授は指摘しました。

延命効果について、抗がん剤は延命効果が大切であって、腫瘍が縮小しても延命につながらないものは意味がないと述べ、イレッサには腫瘍縮小効果があったにせよ、延命効果が認められていなかったと指摘しました。

「抗がん剤による副作用死は仕方がない」という主張については、そもそも副作用死は高い頻度で起こるものではなく、現在は外来で処方できるほど安全なものとなっており、「仕方ない」という言い方は誤っていると主張しました。「もともと死ぬ運命なのだから」という言い方については、だからこそ少しでも延命させることが大切なのだ、と強調しました。

イレッサの添付文書について、間質性肺炎のような重篤な副作用については、「警告らん」に書くべきであって、発熱や下痢といった症状と同じ「副作用らん」に記載すべきではないと主張しました。「警告らん」は、「副作用らん」と違い、添付文書の冒頭に赤字で記載されることから、かなりの緊張感をもってとらえられることも指摘しました。

さらに福島教授は、すでに承認され使用されている抗がん剤「ドセタキセル」との比較試験においても、イレッサはその有効性を証明できず、延命効果が示されなかったことを指摘し、イレッサの承認は取り消すべきだと、明確に述べました。

最後に、代理人弁護士から、薬害イレッサについてどう思うか問われた福島教授は、「このような事件は前代未聞だ。日本の恥だといえる。亡くなった方は700名近くいる。審査過程を見る限り、副作用がわかっていたのに承認した。本来であれば、死亡も裁判もなかった。厚労省は過去の薬害に対する反省から対策をつくったはずなのに、全く何もしなかった。二度とこのような薬害を起こさないでほしい」と、怒りをあらわにして述べました。

この後、書証の提出などが行われ、閉廷しました。閉廷後、弁護士会館で、報告集会が行われました。福島教授は、薬の販売について、欧米で使われない薬(イレッサはその典型です)が、日本で使われていることを指摘し、欧米のビッグファームによる小国日本に対する収奪だと主張しました。そして、今の政権が、「科学技術立国を目指す」と言っていることに対し、本件訴訟はまさに「科学」が問われている事件であり、このような訴訟が起きている国が「科学技術立国」とはナンセンスだ、と厳しく批判しました。そして、科学とビジネスのつながりを指摘して、哲学のない科学は悪魔だ、今日ここにいる人たちにはそのことを認識してほしい、と訴えました。

福島教授は、本件薬害に対し、かなりの怒りを覚えていることが、言葉の端々から伺えました。法廷においては、口調も極めて厳しいもので、その怒りがよく伝わってきました。

6月1日に、共産党の小池晃参議院議員からなされた、イレッサによる副作用死に関する質問主意書に対して、これまでに706名が死亡しているとの答弁があったことが報道されました。これについて、厚労省は、「イレッサを使用したことで重大な副作用が発現することがあると認識している。今後も業者からの報告などにより知見を集積、内容を踏まえて安全対策を講じたい」とコメントしたと報じられています。706名の副作用死が報告されているのに、まだ「知見を集積、内容を踏まえて安全対策を講じたい」という厚労省には、福島教授同様、怒りを禁じえません。厚労省は、どの程度の副作用死報告が「集積」されれば、対策を取るのでしょうか。これ以上の副作用死を出さないためにも、一刻も早くイレッサの承認を取り消すべきだと思います。

なお、次回の口頭弁論期日は、2007年7月18日午前10時20分から103号法廷で行われます。福島教授に対する反対尋問などが予定されています。

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