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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

都立板橋高校卒業式事件(威力業務妨害被告事件)

弁護士 津田 二郎(東京弁護士会)

1 はじめに
都立板橋高校卒業式事件とは,都立板橋高校の2003年度(平成15年度)卒業式の開始前に,板橋高校の元教諭である藤田勝久さんが,保護者席に向かって「今年の卒業式では,教員は国歌斉唱の際に起立しないと処分されます。ご理解願って,国歌斉唱の時できたら着席願います。」と話しかけるなどした行為が威力業務妨害罪にあたるとして起訴された,「日の丸・君が代」強制に反対する言論に対する弾圧事件です。
この年の卒業生は,藤田さんが一年生の時に生徒指導を担当していました。特に視覚障害を持っていて,登校指導の際に何度も一緒に横断歩道を渡ったこともある卒業生がピアノ伴奏をすると聞いていた藤田さんは,この日の卒業式を大変に楽しみにしていました。
そんな卒業式の日に「日の丸・君が代」を強制することは似つかわしくない,と藤田さんは思いました。藤田さんは,卒業生の晴れの舞台を心から祝いつつ,そして晴れの舞台だからこそ,何らかの強制が働く下では迎えさせたくないという教育者としての信念で藤田さんは保護者席の前に立って,保護者に語りかけたのです。それは卒業式開始前の,保護者などが自由に着席位置を定め,隣席の保護者たちと会話をしたり,ビデオカメラで撮影の準備をしている,そんな時間帯の数十秒間のことでした。
藤田さんは,話し終わった直後に「やめろ」などと教頭に言われました。また藤田さんは,来賓としてこの卒業式に招かれていたにもかかわらず,不当にも式場からの退出を求められました。藤田さんは,このような不当な行為に対して,一切有形力を用いることなく抗議をしつつ,素直に出入り口から退出したのでした。
本件で「威力業務妨害罪」に当たるとされているのは,このような行為なのです。

2 第一回公判における裁判所の異常な警備
2005年4月21日,第一回公判が東京地方裁判所104号法廷で行われました。
裁判所は職員約25名を動員して,傍聴人の一人一人について入廷の際に所持品検査,ボディーチェックを行っていました。これは刑事事件も含めて通常の事件ではありえない,きわめて特殊な対応です。
弁護人が裁判長に対して傍聴人に対するこの異常な対応について抗議すると,裁判長は,「騒いだら,今後この法廷を使わせない」という威嚇を暗にしてきました。この訴訟指揮に対して弁護人の尾山弁護団長,加藤弁護団事務局長,澤藤弁護士がそれぞれ意見を述べました。

3 冒頭手続き
人定質問の後に,起訴状朗読,黙秘権告知と続き,弁護側が起訴状の公訴事実が不明確であるとして求釈明の申立を行いました。これは主に弁護団の小沢弁護士が担当しました。検察官が全ての求釈明には応えず,また求釈明に応えた部分がさらに不明確であるとして,弁護団からさらに詳しい釈明を求めました。しかし,裁判所は,途中で「釈明の必要はない」と議論の応酬を打ち切りました。
この訴訟指揮に対して,弁護人が異議をいうも,採用されませんでした。

4 公訴権濫用論
次に,弁護団から公訴棄却申立書の申立てを行いました。これは,公訴事実を前提としても被告人の行為は何ら犯罪を構成しないから,直ちに公訴を棄却せよ,というものです。
この公訴棄却の申立に先立ち,まず被告人の藤田さんが意見陳述をしました。
30分ほど休廷のあと,約1時間30分にわたり,尾山弁護団長,田場弁護士,大山弁護士,私,の順で公訴棄却の申立の理由を朗読し,さらに大山弁護士が,さらに補充書を提出しこれらを補充しました。特に田場弁護士以下の三人は,50期代の若手弁護士であり,傍聴人にも強いインパクトを与えました。のちの報告集会では,「わかりやすかった」「本当にひどい事件だ」などの感想も出されました。

5 罪状認否・証拠調べ
続いて罪状認否が行われ,弁護団の加藤事務局長が被告人に代わって事実についての認否を行いました。さらに,検察官が冒頭陳述と証拠請求を行いました。

6 報告集会
閉廷後,場所を弁護士会館12階に写して,記者会見と報告集会を行いました。多数の記者と4,5のテレビカメラが入り,この問題に対するメディアの高い関心を感じました。
なお,当日の傍聴者数は,130名程度とのこと。報告集会には40人あまりの方が参加していました。

7 次回以降の予定と傍聴のお願い
第2回公判は5月12日に行なわれました。次回以降の公判の予定ですが、第3回公判は5月30日(月)10:00から16:30の予定で同じく東京地裁104号法廷,第4回公判は,6月21日(火)10:00から16:30の予定で同じく東京地裁104号法廷です。
本件は,東京都教育委員会が強力に推し進める「日の丸・君が代」強制政策が背景にあります。反対意見をもつ教職員に対して処分を,処分ができない一般市民に対しては刑事罰をもって「日の丸・君が代」強制に反対する言論を弾圧しようとするものです。一人一人が違う意見を持っていて当たり前,その違いを前提にして共生する,という民主主義社会のあり方の根本を突き崩すような,重大な事態が進行しています。どうかこの事件に関心を持ってください。そして,どうか傍聴に来て,何が起こっているのかをご自分の目でごらんになってください。
当日は先着順となりそうですので,関心のある方はお早めに裁判所へお越しください。なお法廷内では,裁判所の許可なく写真撮影,録音などはできませんのであらかじめご了承ください。

 
 
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